TOA

□繋ぐ未来
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風に乗って新緑の匂いが鼻腔をくすぐる。
屋敷の庭に植えられた花が咲きみだれて、目に鮮やかだった。


「いやぁ、素晴らしい庭ですね。とても手入れが行き届いていて…」

ペールが丹精込めて手入れした庭を褒める目の前の赤目の男は、眼鏡を直しながら応接室の窓の外を見遣っている。

「──ルークの様子を見に来たのだろう…?」
勿体振った言い方に多少苛立ちながら、早く本題に入りたくてアッシュは先を促した。
彼が此処に来る理由が、ひとつしかない事を知っていたから。
──目の前の男、ジェイドの事をアッシュは何処となく苦手に感じていた。

それは大人特有の、肝心な所を上手くはぐらかす術に長けている人物だからだろうか。
「ええ、そうです。話が早くて助かります。それで彼はどちらに?」

窓から視線をアッシュに戻しつつジェイドが尋ねる。
「部屋で本を読んでいる筈だ。今連れて来る…」
「待って下さい」
アッシュが応接室から出ようとした時ジェイドが呼び止めた。
「いえ、少し貴方とお話しをしたいのですが、よろしいですか?ルークとはその後にでも…」

一瞬間を置き、頷く。






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