『罪と囚シリーズ』―螺旋の刺
□闇の世界で、生きると誓った日
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光溢れる世界は、もっと温かな空気に包まれている。魔界みたく、背筋を凍らす冷めたい空気じゃない。
「天使ですか」
「うん。ほら、羽根も」
「…どんな罪を犯したんですか?」
「ー…知らない」
母様は何も言ってくれなかった。
ー…罪が何かを。
僕が犯したであろう罪すら、一言も。
ただ、泣いていた。
泣いていたんだよ…。
笑顔が素敵な母様が、僕を見て。
それが、何だか、無性に悲しかった。
「知らないんだ。母様は…母様は…僕を嫌いになったのかな?」
嫌いになったから、捨てられたのかな?
「はぁぁ…。私とした事が。子供に声を掛けるなんて、どうかしていますね」
「…」
「ー…ハヅキ」
男は僕の名前を聞いてきた。
「フルネームで、お願いします…」
目の前に現れた古い本は勝手に開いていく。
お目に掛かるのは初めてだけど、間違いでなければ、僕の瞳に映る本は“黒の本”だったりするのだろうか。