『罪と囚シリーズ』―螺旋の刺
□黒き百合の夜行曲
1ページ/12ページ
――天神界・ウリエル邸・寝室
「んっ、誰…」
寝ていたウリエルは閉じていた眼をゆっくりと開く。
開かれた瞳に映ったのは家臣達に体躯を支えられているサキエルとガブリエルの姿だった。寝惚けていた頭を一瞬にして醒ましてしまい、驚愕する。
二人にこんな傷を負わすのはウリエルが知っている中で三人しか知らない。
天神界でも有名な魔界帝国の大侯爵兄弟。
あちらは長男であるアルザリ卿が剣の使い手だと聞いた事がある。故に弟であるアルゼス卿もイルア卿も兄には劣るが凄腕だと聞く。
「…サキエル、ガブリエル!!!一体…誰に遣られたのですか!」
「ふふふっ、俺達の…不注意でな」
「侮ってしまいましたよ。相手は一人だと思っていたんですけど…」
「――…二人居たのですね」