『罪と囚シリーズ』―愛し運命の輪
□愛し運命の輪
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ウリエル自身が空を眺めていたら、悲しむに違いない。
「――…ウリエルっ」
名を呼んだって届く筈もない。
此処にはもう、足を運んでもらえないのだ。けど、自分から赴けばどうだろうか。
ウリエルは逢ってくれるのか。
――…逢いたい。
その気持ちだけでゼウダーは此処まで来た。天使界に棲む天使や神々だけで彼を倒す事は不可能に等しい。
寧ろ、ウリエルを助けない者達など灰になってしまえば良いと思っている。
ゼウダーは静かに立ち上がると、天神界に続くであろう白の道に向かって歩いて行くのであった。
ただ、愛しい存在を助けたい。
ただただ…
想いを伝えたく。
渓谷を振り返る事もせず、真っ直ぐと。
天神界を目指して進んで行った。