『罪と囚シリーズ』―螺旋の刺
□運命のプレリュード(前編)
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とある男が魔界へ師に導かれ、色んな圏を瞳に映してきたのだと云う説がある。
洗礼された者、愛欲を犯した者、暴力に物を言わせた者が堕ちる場所。どろどろでぐつぐつと厚釜で煮た様な生きる者が想像しない所まで足を運んだというのだ。
その人間が瞳に映し、何を思い描いたのかは私には解らない。
でも、魔族とは魅力の塊だと思います。
堕ちてはいけないと頭では理解していても、心は正直なんだと。
私もまた、魔族に魅了された一人なのかも知れません。
「神の曲と書き『神曲』ですか。素晴らしく、興味深い物語でした」
なら、私の想い出も曲を奏でてくれるでしょうか。
決して結ばれる事すら敵わない悲愴を…。
走馬灯の如く、描き出してくれるでしょうか。
何時の日か、生まれ変わったら、前世では大層な罪を犯したもんだと、笑えるでしょうね。
ー…廻る、始まりの羅針盤。
全ては…。
私と貴方に出逢った事から始まり、見えない歯車が狂い出した。
此処に刻まれるのなら、大天使と魔界侯爵の儚い恋愛(こい)を開きましょう。
運命とは時に残酷なのです。華やいだ世界の裏は血塗られた世界。
歴史と共に暗黒化され、表沙汰にはならないのです。