『罪と囚シリーズ』―歪曲の杯と死の宴
□雨色、闇色、恐い顔…
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――魔界・プリゾ邸・バルコニー
私は、ゼウダーの娘であるセレスとラリマに頼まれプリゾ邸を訪れた。
魔界の空は案の定、今にでも雨が降り出しそうな勢いだ。先ほどまで何もなく、綺麗な月が浮かんでいたというのに。
まったく…
彼の心境は複雑だ。
『父は、何も話してくれません。雨が降り続ける庭に出たり、酒を飲んだりとするんです…』
『アルザリ様…父様に何があったのでしょうか。あのままでは身心が心配であります』
二人の愛娘に心配させて…
原因は、あの頃にあるのでしょうね。
怒りを抑えるのが必死な恐い顔をして貴方は、魔界へ帰って来た。カミューから事情は聞いていましたが、私は触れませんでした。
愛しい存在に言われた言葉が余程、効いたと思ったから…
『彼は…ゼウダーを護ったのですよ…』
『えっ』
『えぇ、護ったのです。これから始まる…神と魔族の闘いの為に…』