『罪と囚シリーズ』―愛し運命の輪
□愛し運命の輪
1ページ/13ページ
―天神界・蒼の谷
生温い風にブルーグレー色の髪が靡かれる。始まりは、下界からだった。
娯楽の一つとも言える遊戯で、ゼウダーは恋に落ちるまでのカウントダウンを打つとは思いもしなかった。
相手は天神界の門番であり七大天使の一人、麗しきウリエル。美の女神に並ぶ美しい男性だった。
時は流れ、久しぶりに逢う彼は益々美しさを重ねていた。
何度、拐いたいと思った事か…
大天使という糧に縛っている姿が、とても初々しく思えた。そうまでして拘っている彼に心惹かれていったのだ。
「…っふ」
心が痛い。
ゼウダーは岩に身体を預け、暗雲の空を眺める。
『――…私は、晴天な空が好きです』
嘗て、愛しい存在は言った。
『雨や曇りよりも……晴れて太陽が燦々と輝く風景が何より好き…』
ゼウダーを蕩けさす様な甘い笑みを浮かべて。
だが、今の空を見たら涙を流してしまうんではないか。神と魔族の闘いを待っているかの如く、空は分厚い雲に覆われている。