うぃっしゅ ふぉー しゃいん

□第五話
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ここにつくなり場を仕切った女。
どうやら医術を知るものらしいが、依然正体は不明だ。


「君は、誰だい?」

『私は千冬といいます。
すこし医術をかじっているのです。』

「ふぅん、君が噂の町医者なんだ。」

『噂、というのは存じませんがおそらくは。
あなたは?』

「僕はアラウディ、一応ボンゴレに属してるよ。」

『こちらこそ色々噂をうかがっています。
一つ聞きたいのですが、この男達はどうなるのですか?』

「ボンゴレで身柄を拘束、だろうね。」


そう答えると女、もとい千冬は俯き、考えるそぶりを見せた。
それも数秒、すぐに顔を上げて僕に向き直る。


『ボンゴレにはきちんとした医者はいますか?』

「さぁ、僕は大怪我なんてしたことないから知らないね。」

『つまり幹部でさえもボンゴレで医者を見たことが無い、ということですね?』

「なにが言いたいの?」

『・・・紙と、書くものを貸していただけますか?』

「ねぇ、ちゃんと説明し『麻薬です』は?」

『この男達は、麻薬に手を出しています。』


僕にだけ聞こえるように声を潜めて麻薬だと言い千冬。


「へぇ、証拠は?」

『証拠、と言われましても。
医者でなければ分かりませんよ?
とりあえずこの男が麻薬を所有している証拠ならあなたにも分かるでしょうけど。』


確かに脈がどうのなんて言われても僕には分からない。

千冬は男のポケットに手を突っ込んだ。
出てきたのは薬包紙が数包み。
彼女が僕に見せるようにそのうちの一つを開くと、包まれていたのは白い粉。
彼女の言うとおり麻薬なのだろう。
思った以上に麻薬はこの町を蝕んでいたらしい。

僕は麻薬関係のことを調べていた。
そこで偶然出くわした麻薬に関係する小事件と、麻薬の知識を持つ女。
否、偶然か?

ジョットじゃないけど、僕の直感が告げる。
この女、なにかある。


「あるよ。」

『え?』

「紙と万年筆。」

『ではお借りします。』


女を僕が座っていた奥の席へと促す。
そして万年筆と紙を渡す。
そういえば彼女がなにを書きたいのかを聞いていなかった。

カリカリとペン先の擦れる音につられて僕は女の手元を見た。


「X…!」


彼女が書いていたものの内容は目に入らなかった。
ただその筆跡ははジョットに渡された手紙の送り主、Xにあまりにも酷似している。

女が戸惑いの表情でこちらを見上げる。


『あの、麻薬に手を出した人間をどう扱えばいいのかについて書きました。
役立てていただければ幸いです。』


いまだ戸惑いの表情を見せる彼女から紙と万年筆を受け取る。
ご丁寧に添えられた両手に僕は手錠をかけた。


「君を、連行するよ。」



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