しょうねんしょうじょものがたり

□少年は修める、少女は習う
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今あたしはアラウディの家にいる。
彼の自宅には大きな書庫があるのであたしも貸してもらってるの。

彼がいるときは二人で来るけど、今日は一人。
アラウディは不在なの。
なんでも両親の仕事を継ぐための修行をしてるらしい。
すごいなぁ、と思う。
あたしには将来の夢なんてないから。

最近二人でいる時間が少ないの。
寂しいとは思う。
でももっと一緒にいてとは言わない。
それどころかラウのいない時間にちょっと感謝。
だってあたし、ラウのいない時間に料理をお母さんに習ってるの。
少しでもおいしい料理を作りたいから。
修行で疲れたラウに、少しでもおいしい料理を食べてもらいたいから。
夢って訳じゃないけど、それが今のあたしの目指すものかな。

ちょっと埃っぽくて、年代を感じる書庫。
蔵書も様々で、絵本から小説、いろんな国の歴史書や、解剖書まであったりする。
なかにはあたしの知らない、外国語で書かれた本もある。

たくさんある本の背表紙を眺めながら、今日借りる本を決める。
アラウディは目的を持って本を読んでるみたいだけど、あたしは乱読が好き。

なんか今日はミステリーが読みたい気分だなぁ。
そう思って推理小説を手に取る。

あと最近の日課となりつつある料理本選び。
料理の基本はお母さんに習う。
そして新しいことは本を見ての独学。
いろんな国の郷土料理で、気に入ったものを覚えるの。
今日は日本の、和食についての本にしよう。

本選び終わったよ、と言いかけて口をつぐむ。
今日は一人で来てるってことを忘れてた。
癖だなぁ。
まあ反射でしちゃうから癖って言うんだけど。

本を選ぶのはここ、でも読むのはあたしの家。

ちょっと重めの書庫のドアを閉める。
いつもならアラウディがドアを開けてあたしを待っててくれるんだけどね。

家にはドアが二つある。
一つは玄関、もう一つは勝手口。
勝手口は庭へとつなっがてるの。

あたしの家とアラウディの家を行き来するのに一番近いのは勝手口。
昼間は鍵もかけないし。
だからいつも使ってるし、今日も勝手口から家に入った。
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