うぃっしゅ ふぉー しゃいん

□第五話
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ジョットも無理難題吹っかけてくれるよね。
紙切れ一枚を元に調べろだなんて。
けれど放って置くわけにはいかない。
麻薬が町に出回るねんた治安が乱れるのと同義だ。

麻薬に手を出した人間は頭がおかしくなる。
そんなやつらが闊歩するような町にリリアを置いておくことは出来ないしね。
一刻も早く対策を立てるなり解決するなりしなければならない。

そう思って来たのは町にあるカフェ。
いつものように店の一番奥のテーブル席に座る。
いつも通りにブラックコーヒーを頼んでから持参した新聞を広げる。
数種類の言葉で書かれた各国の新聞。
いついかなる時に世界情勢が必要になるか分からないから常時情報を蓄える。

注文したコーヒーを一啜り。
適度な苦味が脳を活性化させる。

懐よりジョットから預かった手紙を取り出す。
手がかりはテンペスト家関係者であることと、たぶん女だということ。
けれどそれだって証拠はない。
確実なのは筆跡のみ。

テンペスト家に関わる者すべての筆跡をどう調べろと言うのだろう。

またコーヒーを一啜り。
事件が起こったのはそんなとき。


ガシャーン

キャアァァアアア

「おい、酒をだせぇ!」

「それと女!」

「極上の女もな!」


ガラスの割れる音と響き渡る女の悲鳴。
続いて聞こえる下卑た男の声。

カフェの入り口を見ると赤ら顔をした男が数人いた。
そのうちの一人の手が赤く染まっていて、近くの窓が割れている。
どうやらその男が割ったらしい。

叫び声をあげる人、逃げ惑う人、逆に恐怖ですくみあがった人、慌てふためく人。
うるさくて仕方が無い。


「ねぇ、うるさい、逮捕するよ。」

「ああぁん?」

「なんだよ兄ちゃん!」

「お前もこんな風になりたいのか?!」


そう言って割れたガラスを指差す男。
その後に響く下品な笑い声。
いい加減にして欲しいな、僕は今機嫌がよくないんだよ。

はぁ、とため息を吐いて戦闘態勢に入る。
総勢三人、たいしたこと無いな。
地を蹴り一気に距離をつめる。
一人には足払いをかけて首筋に手刀をおろす。
一人はこめかみに裏拳を入れる。
最後の一人のわき腹に膝蹴りを決める。

周りから見たらそれは一瞬の出来事だった。


「全く、治安を乱して。
君たちは三人とも逮捕するよ。」


三人を足でうつぶせにしてから腕に手錠をかける。
後始末はジョットに押し付けようかな、と考えていたらカフェの外がにわかに騒がしくなった。

そして町人に半ば引きずられるようにしてカフェの入り口から顔をを覗かせたのは、黒髪にスカイブルーの瞳をした女だった。
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