Short story
□消記憶屋
2ページ/9ページ
「弥生さん、依頼です。」
「そう…報酬は?」
「えっとー…100万ですね。」
そういうと本当に嫌そうな顔をする。
「…何人?」
「…三人です。」
予想通りとでも言うように、はぁと一つ溜め息をついて手に持っていた焼酎を飲み干した。
大体報酬が高いとその分人数が多いことも知っている。
「また嫌な夜が続くわね、焉ノ瀬。」
「…ええ。」
人は嫌な記憶をお金で何とかしようとする。彼女の存在が大きく関係しているのかもしれないが、それは人の一つの生き方。
消して後悔するのは本人なのに。
「さぁ、時間よ。薬の準備は出来てる?」
「ええ、今日は多めに作りましたよ。香水の準備も出来ています。」
「和紗、車を出して。」
【かしこまりました。】
「今日も無様な人の記憶をいくつも見るのね…」
彼女は嫌な記憶を消しているわけではない。
受け渡されているだけなのである。
.