恋に落ちた海賊王:番外

□Who will you fall in love with?
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原作では「同室になったキャラと恋に落ちる」設定ですが。
それぞれ魅力あるキャラ達の中にいて特定の人物にしかときめかないなんて勿体無いという非常にけしからん観点から妄想してみました。



「Who will you fall in love with?
 episode shin」
ヒロイン目線で。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


「えっと、この場合はマストの下の方から畳む・・・でしたっけ?」

 全く自信のない回答を恐る恐る口にしながら、上目遣いにちらりとシンさんを見ると、薄く開いた鋭い目とぶつかった。

「逆だ。」

 シンさんは溜め息をひとつついて、机に広げてある帆船が描かれた図を指し示しながら説明を始める。

「いいか?展張する時はマスト下部のセイルから、畳むときは上部からだ。この手順を間違えると、危険が伴う。よく覚えておけ。」

「は、はい・・・ッ」

「解くときは風下を先にし、畳むときは風上から行う。」

「・・・・・・・・・」

「・・・聞いてるのか?」

「えと、ちょっと待ってください、こんがらがっちゃって・・・・・・」

 私がアタフタしながらシンさんの言った事をブツブツ復唱していると、シンさんが、帆船が描かれた用紙を私の方へすっと差し出した。

「もう一度始めから言ってやるから、空いているところにメモしていけ。」

「へっ」

「帆船に乗っている以上、帆を張ったり畳んだりする手順は作業の要だ。
 体で覚えるのが一番だが、頭でも理解していると尚良い。
 帆船用語と名称を時間が空いた時に読み返して、しっかり覚えておけ。」

「は、はいッ」

 言われた通り素直にメモを取る私に合わせて、シンさんがゆっくりと言い直してくれた。

 時々小突かれたりはするけれど、私の為にこうして時間を取って、誰よりもきちんと、正確に、色々な事を教えてくれる。

 シンさんは厳しいけれど、シンさんといると不思議と安心感があるのは、この豊富な知識のせいかもしれない。

 シンさんならきっと知ってる。
 きっと何か方法を考えてくれる。

 ・・・そんな風に、頼ってしまうのかもしれない。

「出来ました!!ありがとうございます!
 私、これをポケットに入れて、いつでも見れるようにしておきますね。」

 そう言って笑うと、シンさんが少しの間私を見つめた。

「口を開けろ。」

「?」

「褒美だ。」

 反射的に開けてしまった口に、シンさんがひょいと何かを放り込む。

「んっ!・・・・・」

 甘い!
 しかも、すごい美味しいッ!!

 口の中に広がる上質なチョコレートの甘味に、うっとりしながらシンさんに瞳を向けると、シンさんが満足そうに答える。

「なかなか手に入らない高級チョコレートだ。味わって食えよ。」

「んーーーッ」

 ありがとうございます!!

 と、言えない代わりに、コクコクと頷く。

「・・・お前はいつも美味そうに食うよな」

 シンさんが優しく瞳を緩ませたかと思ったその瞬間に、リュウガ船長の声が空気を変えた。

「シン、次の目的地が決まったぞ。海図を出してくれ!」

「はい。」

 次の瞬間のシンさんは引き締まった表情をしていて、もう、私の方を見ない。

 それが切ないような、でもその姿が凛々しいような・・・複雑な気持ちになりながら、二人を見守る。







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■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


2012-05-28 (Mon) 23:51


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