恋に落ちた海賊王:ハヤテ

□落ちる
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「落ちる 後編」
ヒロイン目線で。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 結局私は先にベッドに入る事にした。ランプは消さずに火を小さく絞っておく。

 私が寝付く前に、ハヤテさんが部屋に戻って来た。

 静かにドアが閉じられたけれど、ごそごそと物音をさせながら何かをしている。

 ・・・あ、剣の手入れ!

 ハヤテさんは、毎日寝る前に欠かさずに剣の手入れをするんだった。

 薄明かりの中で気付かれないようにそっと見つめる。

 手入れをするハヤテさんの顔は、すごく優しい。剣を労わっているんだろうな・・・。いつもとても丁寧に時間をかけるもん。

「・・・・・・」

 私がランプを絞ったせいで部屋が薄暗い。こんな中での作業は危ないんじゃないかな。

 声を掛けるのは気が咎めたけれど、意を決して起き上がった。

「あ、起こしちまったか?」

「いえ、起きてたので・・・。ランプ、点けてください。暗いと危ないですよね?」

「ああ、悪いな。」

 私の言葉を素直に受け取って、ハヤテさんがランプの火を大きくした。

 ベッドの上で膝を抱えるようにしてハヤテさんの作業を見守っていると、そのうちハヤテさんは剣の手入れに専心した。

 2人とも無言のまま、ゆるやかに時間が流れる。

 沈黙の空間なのに、なんだか心地好い。

 こういう時間の共有もあるんだ・・・。

「・・・よっしゃ、これでまた明日も絶好調だな!」

 疲労感をまったく見せずに、満面の笑みでハヤテさんが立ち上がる。手入れの道具を片付け始めた。

「ハヤテさん、毎日スゴイですね。」

 背中に、声を掛けた。

「あー?手入れの事か?」

 片付けながら、ハヤテさんが返事をする。

「それもありますけど・・・稽古が。あんなに全力で毎日・・・」

「あー・・・、・・・でもオレ、ずっとこうだけどな。」

 ずっと?

 じゃあ、もう習慣なのかな?

「力の出し惜しみ、したくねーんだ。もっとやっときゃ良かったって、後で思いたくないからさ。」

「次の日倒れちゃったりとかしないですか?」

「そーいや明日の事とか・・・あんま考えてねーかも。今日精一杯やって・・・、・・・そんだけだな。」

 そう言って、ハヤテさんが振り返った。

「それに、この出し切った感がキモチイイしな!」

「・・・ッ!」

 笑った顔が、少年みたいにあどけなくて、心にジュッと焼き付いた。

 なんて真っ直ぐな人なんだろう。

 無鉄砲だけど・・・・・・

 純粋に、自分の道を一生懸命歩いてる人なんだな・・・。

 ・・・今日を、精一杯。

 素直に、素敵な言葉だと思った。ハヤテさんが言うと、説得力がある。

「さー寝よ寝よ。明日も早ぇーぞ!」

 ぐーーーっと伸びをしてから、ハヤテさんがベッドに潜り込んできた。子供みたいに、毛布にくるまって気持ち良さそうに目を閉じる。

 ひとつのベッドに一緒に眠るなんて、とずっと思ってたけど・・・なんか、別にいいかって気持ちになっていた。

 ハヤテさんって、なんだか不思議。憎めないってゆーか・・・そばにいると元気が伝染ってくるってゆーか・・・。

 ハヤテさんの寝顔を見ながら、ランプを消してベッドに入った。


 私はこの日、恋に落ちたのかもしれない。







END

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

久し振りに恋海妄想。
今日を精一杯なのはトワくんかな
って気もしたけれど
無鉄砲なところは、
やっぱりハヤテさんかな。
嗚呼ハヤテさんの声が聞きてぇ・・・


2011-09-10 (Sat) 22:19


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