恋に落ちた海賊王:シン

□In essence
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全3話。



「In essence 1」
ヒロイン目線で。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


「南国で宴がしたい!」

 鶴の一声とはよく言ったもので・・・・・・。

 ここのところ寒い海域ばかりを転々としていたシリウス海賊団は、リュウガ船長の提案で、冬から一転真夏のように暑いトロピカルな島へ針路を取った。

 まだ目指す島には着いていないのに、甲板を吹く風は確実に暖かく、空気は熱を帯びていく。

 甲板掃除が一段落つく頃には、額も背中も、汗が流れていた。

「暑・・・・・・」

 ブラシを擦る手を休めて、甲板から晴れた空に視線を移す。

 照りつける日差しはまさに夏。

 ついこの前まで寒い寒いと震えていたのが嘘のよう・・・。

 気温だけは既にトロピカル。

 額の汗を拭うと、昨日衣替えした半袖シャツのボタンをひとつ外し、襟元を掴んでパタパタと扇いだ。

 多少涼しいような、たいして変わらないような。

 もうひとつボタンを外して、もう一度襟元を掴んでパタパタと扇いだ。

 あ、これはだいぶ涼しい!

「・・・・・・」

 ボタンみっつはやりすぎだけど、ふたつくらいだと胸元も見えなくて涼しくてちょうどいい。

「暑いですね、ナギさんに何か飲み物貰いに行きましょうか。」

「うん!」

 一緒に甲板掃除をしていたトワくんの言葉に、二つ返事で同意する。

 道具を片付けて厨房へ向かいながら、トワくんの涼しげな足元が目に留まった。

「トワくんのサンダルいいね、涼しそう。」

「えへへ。この気温だと、かなり快適ですよ〜。」

「だよね。島に着いたら私もサンダルにしようかなぁ〜。」

「島なら種類も多そうですね!」

 そんな話をしながら、船内へ入ろうとした時ふとなんの気なしに視線を上げた。

「!」

 一瞬、バチッと音がしそうに視線がぶつかった。かと思った次の瞬間には、さらりと流される。

 あ、あれ・・・・・・?
 気のせいだったかな・・・・・・。

 舵を握るシンさんは、涼しい顔で海を見つめていた。

「☆☆さん?どうしたんですか〜?」

「あっ、ううん、今行く!」

 食堂の扉を開けて待っていてくれるトワくんの元へ駆け出した。







to be continued


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


2013-02-11 (Mon) 15:23


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