恋に落ちた海賊王:ソウシ
□あなただけを。
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「あなただけを。 2」
ヒロイン目線で。
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「・・・今日も来てる!」
ソウシさんより遅れて臨時診療所に入った私は、昨日の巻き毛の女の人の姿を見つけてギョッとした。
思わず足が止まる。
明らかにソウシさん目当ての巻き毛の女性の話を、優しく微笑みながら聞いているソウシさん・・・。
「・・・!」
ふと、ソウシさんの手が、巻き毛の女性のこめかみに触れた。
何か話をしながら、今度は頬を包むようにして耳の下辺りに指を当てる。
「・・・・・・」
ドキンドキンと、嫌な音が胸に響く。
視線をそらして、顔をそむけるようにしたまま持ってきた消毒用の綿を入れた瓶を薬品の側に整備する。
・・・診察をしているだけ。
そう思っても、胸は苦しく鳴り続ける。
だって、その人、どこか悪いの?
診察する必要、あるの?
思わずグッと奥歯を噛んでいた。
・・・ソウシさんは、優しい。
お医者様という職業柄もあってか、少しの変化にも敏感に気づいてくれる。
気配りも忘れない。人当たりもいい。照れずに歯の浮くセリフも言えちゃう。
その上、男前。
・・・これで、モテない方がおかしい。
わかってる。
十分過ぎる程にわかってる。
それに、つまらないヤキモチなんか焼くべきじゃないって事も、・・・頭ではわかってる。
そう思いながらも、納得しきれない。
あんな野次馬みたいな人にまで、丁寧に診察する事ないのに。
「少し疲れがたまってしまったのかも知れないね・・・これを夕食後に飲んでみてください。もし心配なら、明日も遠慮なく来てください。お待ちしていますよ。」
親身に相槌を打っていたソウシさんは、女の人に薬の入った袋を手渡した。
「お代は結構ですよ。あなたが早く元気になって笑ってくれる事が、私の報酬ですから。」
最後にとどめの殺人的スマイルを浮かべて送り出すソウシさん。
そんなソウシさんを見つめる女の人の瞳には、でっかいハートマークが飛んでいた。・・・ように私には見えた。
・・・お、お代は、誰からも貰ってないんですからね!
それに病気じゃないならもう来ないでくださいねッ!
心の中で言い添えながら、私も巻き毛の女性を見送った。
「・・・あの人、どこが悪いんですか?」
「えっ?」
私の質問の意図がわからないのか、ソウシさんは一瞬きょとんとした。
「お薬、渡してたみたいだったから・・・。」
あまりに邪気のない反応に、自分の嫉妬に嫌悪感を覚えて思わずうつむく。
「ああ・・・。あれは昨日も渡したんだけど、ビタミン剤だよ。アンさんはちょっと今不安定なのかも知れないね。」
・・・アンさん?
それって、さっきの女の人の名前!?
「また明日も来るかもしれない。」
「ええっ!?」
「え?」
「ど、どうして・・・?」
どうして断らないんですか?
どこも悪くない人の相手なんて、しなくていいのに。
「どうしてって、ここは一応診療所だからね。」
ソウシさんの優しい微笑みに、それ以上何も言えなくなってしまった。
to be continued
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2012-07-28 (Sat) 16:00
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