恋に落ちた海賊王:リュウガ
□境界線
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全8話。
「境界線 1」
リュウガ目線で。
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夜中にふと目が覚めた。
薄暗い部屋の天井に焦点が合った次の瞬間には腕の中ですやすやと眠る☆☆を確認して、意図せず安堵の息を漏らす。そっと手を伸ばしてゆっくり髪を梳くように頭を撫でた。
抱き枕と称して、こんな風に一緒に寝るようにしたのは、体温と鼓動が人を安心させる作用があると何かで読んだ事をたまたま思い出したからだった。
・・・ずっと、波の音だと思っていた。
それが、すすり泣きだと気付いたのは、いつだったか。
あの時の息を呑む悟りは、今も強く胸に残り無意味に俺を駆り立てる。自分の行為が与える影響を嫌でも考えさせられる。
そうして見詰めた☆☆の静かな寝顔に、心が穏やかに癒されていく。
抱き枕は思いの外効果があったようで、それ以来夜中に一人忍び泣いている様子はない。
それでも、俺はまだ時々夜中に目が覚める。
そして☆☆が眠っているかを確かめてしまう。
不意に寝顔にすすり泣きの幻覚が重なり、気付くと、どうしてやればこの娘が安心して眠れるのか思いを巡らせ、・・・最後はいつも同じところへ行き着く。
早くヤマトへ帰してやるべきだ。
海賊船に乗せるなどあまりに無茶だったのだ。
いや・・・そんな事は最初からわかってはいたが、あの時は他にどうしようもなかった。
『彼女は、言ってみればまだ少女だよ?』
ソウシに言われた言葉が頭に蘇る。
すぐに引き返してヤマトに帰してやらなかった事を暗に責める言葉。
『どのみち今ヤマトへ引き返すわけにはいかねぇ。
戻れば海軍の餌食だ。
数日か数週間か、時期を見て決める。』
・・・もとより本気で仲間にするつもりなどなかった。
船員達とのトラブルを避ける意図と、宴上のノリでああ言うのが一番丸く収まると気紛れに考えた結果だった。
もう、ヤマトの港も落ち着いているだろう。
・・・ここいらが潮時なのかもしれん。
夜が明けて港に着いたら、シンに進路変更を告げるとするか。ここからなら、1週間もあればヤマトに着くだろう。
深い眠りについている☆☆の静かな寝顔に、俺は口元を緩め、頬を撫でた。
指先に感じる滑らかな感触が、何故か俺に溜め息をつかせた。
・・・抱き枕も、あと1週間か。
to be continued
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2012-04-26 (Thu) 00:24
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