頂き物BOOK

□変わらないもの
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変わらないもの




【将来の夢】




漠然としすぎているその言葉。

将来と前置きしていても叶うかどうかが分からないから、逃げ道として夢と置く。


なんとも卑屈な考え方だ、となつは真っ白な作文用紙を見、嘲笑する。


これでも小さい頃は、夢はたくさんあった。

所詮、幼い頃の夢など突飛で到底叶えられないものだったが

何故かあの頃は叶うと信じていた。


しかし、物事がはっきりと分かる今。

夢などなければ将来も分からず、宿題である作文を書けずにいた。



「……夢、ねぇ」

「んぁ?」

呟いたなつに、アイスをかじったまま反応する幼馴染み兼彼氏の燐。

何でもないよ、となつはそう言い、燐の口元についたアイスをとってやる。


「おー、サンキュー」

「燐は昔からよく溢すからね」


燐は昔から変わらない。


正義感が強いところも

不器用なところも

私の傍に居てくれるところも


「……なぁなつ」

「?なに」

「俺、昔から変わらないものまだあるんだけど……知ってるか?」


唐突に聞かれ、なつはうーんと唸る。

髪型、とかだろうか。

それとも何だかんだ言って雪男と仲が良いところか……。


未だ考えるなつの手を燐はおもむろに取ったかと思うと口付けた。


「な、燐、ちょ……」

「将来の夢」


驚くなつに対し、燐は屈託のない笑みを浮かべる。



「将来の夢
なつと結婚すること。

昔から変わってねーよ」




変わらないもの

(将来の夢は燐のお嫁さんになること)

(作文用紙に大きく書いて)

(恥ずかしげに、でも幸せに笑った)


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