BOOK(ONE PIECE)
□昔の約束
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放心状態ってわけじゃないけど、変な感じ。
呆気にとられたってわけじゃないけど、変な感じ。
学校からの帰り道、ローがクラスの女の子と手を繋いで歩いているのを見た。
その女の子は愛想も良くて、私なんかより数倍可愛い子で。
その女の子は至極楽しそうにローに話しかけていた。
ローも私には見せてくれないクラッとするような薄笑いを浮かべながら女の子の話に耳を傾けていた。
幼馴染みだった私とローは、なんとなく流れで付き合っていたが、やはり所詮その程度。痛感した。
悲しい?いや、変な感じ。
ただ、ローが幸せになってくれるなら私は清く身を引くよ?
冗談のつもりの恋心は、いつしか自分でも気付かないうちに本気の恋へと発展していた。
遅かった。気付くのが、あまりにも遅かった。
“大人になったら、結婚しような”
“式場は、いつも俺となつが遊びに行ってる海の近くの所にしようぜ”
懐かしい、彼の言葉。
昔から海が好きだったローに付き添う形で私もよく海に行っていた。
海を見ている時の彼の横顔は、普段の悪人顏からは想像もつかないほどにキラキラと輝いていて。
そんな彼の横顔をこれからも一番近くで見守っていたいと、素直にそう思った。
その気持ちは今でも変わらなくて。
…嗚呼、私ってなんて未練がましい女なんだろう。もうローは私とは別々の道を歩き始めているというのに。
今考えて見れば、"幼馴染み"という立ち位置に、私は甘えていたんだと思う。
お互い幼い頃から知っているから、言葉なんてなくてもだいたい分かるし、通じ合えていると思っていた。
きっとローは私にこれまで何回も色々なシグナルを送ってきていたのかもしれない。それは私のメールボックスを見ただけでも一目瞭然だった。
滅多にメールなんて寄越してこないローの、たった数件のメール。
一言二言綴ってあるだけのそれに、どれほどの彼の気持ちが込められていただろう。
そのシグナルに応えてあげられなかった自分が怨めしい。どうしてもっとローに寄り添ってあげられなかったのかと今更後悔するなんて。
昔の約束
(ごめんねロー。なんて言葉さえも、薄っぺらいものに思えて)
2014.3.23
なつ
(管理人の実話、だったりして…)