BOOK(ONE PIECE)

□取り返しのつかないこと
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(『昔の約束』ローver.です。)

「ねぇロー君、明日私の彼氏の誕生日なの。でもまだ誕生日プレゼント買ってなくて…男の子の気持ちは私よりロー君の方が分かりそうだから今日の放課後一緒に買いに行ってくれない?」
放課後、同じクラスのそれなりに話しかけてくる女にそう声を掛けられた。
別に何か用事があったわけではなかったし、なつもそういうことを気にするタイプじゃなかったから俺は承諾した。

放課後、女は自分の好きなものが並ぶ雑貨屋や服屋を見てまわっていた。
「彼氏のプレゼントを買いに来たんだろう」
と言うとわざとらしく気付いたフリをして
「ロー君が彼氏みたいに思えてついデート気分になっちゃった!」
なんて言ってきやがった。
ふざけやがって、俺の彼女はアイツだけだ。

「調子に乗るな。用が済んだら俺は帰るぞ。」
「え〜どうしてよロー君!今日くらいはいいでしょ?ロー君こんなにかっこいいのに彼女いないなんて勿体無いよ〜」
なんて言って手を繋いできやがった。気色悪ィ、早く離せ。

…ん?それよりもこの女、今なんて言いやがった?

「おい、俺に彼女がいないってどういうことだ。」
「え?いないでしょロー君?だってそういう話全然聞かないんだもん。勿体なーい!」
「ふざけるな、俺にはなつがいる。」
「え?なつちゃん?でもただの幼馴染みなんでしょ、ロー君とは。なつちゃん自分でそう言ってるの聞いたし」

それを聞いた瞬間、俺は幼馴染みというポジションに変な安心感を抱いていることに気が付いた。
幼馴染みだから、言葉になんてしなくても通じ合えていると、俺のことも全て分かっているだろうと過信していた。
ああなつが俺を必要としてくれていた時にきちんと応えてやれていただろうか。
否、ユースタス屋たちと遊びに行くためだけに変な理由をこじつけてアイツに応えてなんてやれてなかった。
昔一度だけ俺に見せた、縋るようななつの瞳がアイツなりのシグナルだったのかもしれない。

俺は即座に女との買い物を中断し、なつの家へと走った。
アイツの家に着いてインターホンを押して出てきたのはなつの母親。
しかしなつはまだ家に帰ってきていないという。

「っどこに行ったんだよアイツ…早くしねぇと、」


取り返しのつかないこと
(俺は今まで何やってたんだ、なんて今更すぎて)


 
2014.3.23
なつ

 

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