Book(aoex)
□燐の告白
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「なつ!」
いつも通りの夕方。
母に買い物を頼まれ、買い物に行った帰り道。
後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。
「あっ、燐ー!」
「今、時間空いてるか?」
「うん、空いてるよ!今、丁度買い物が終わったとこだからさ。」
「そっか…良かった。」
あれ…なんかいつもの燐じゃないような…?
それに、燐はどこか焦っている様に見えた。
「なつ、ちょっと一緒に来てくれ。」
そう言って私の手をひいて歩き出す燐。
どうしよう…なんか恥ずかしい…//
「りっ、燐!どこ行くの?」
「…いいから。」
燐の声のトーンが落ちた。
やっぱり今日の燐、なんか変だよ…
「あれ、ここって…」
燐に手をひかれて連れてこられた先は、私と燐が初めて会った場所。
すると突然、燐が真剣な顔をして私を見てきた。
「なつ、今から俺が言うこと、ちゃんと最後まで聞いてくれ…」
何故だかすごく、嫌な予感がした。
「俺、サタンの…悪魔の息子なんだ」
「…!!」
信じられなかった。燐があの、サタンの息子だなんて…信じたくなんかないよ…だって、サタン…あいつは…
「ずっと黙ってて、ごめんな…俺、なつに嫌われるのが怖かったんだ…いつも隣にいたはずのお前がこの事を知って、突然居なくなったら…そう思ったら、なかなか切り出せなくて…それに…なつの父親を殺したのもサタン、なんだろ…?」
「!!…なんで知ってるの…?」
そう、私の父親はサタンに殺された。
まだ私が幼かった頃、騎士だった父は母に私を預け、泣きじゃくる私に優しく、こう言ったのだ。
―「父さんは仕事に行ってくるだけだよ。また必ず帰ってくるから、な?…」
「父、さん…っ」
気付いたら私の視界は涙でいっぱいだった。
もうこの事では泣かないって、決めたのに…
「なつ…本当にごめんな…。俺がもし、普通に人間として産まれてこれてれば、お前に辛い思い、させなかったよな…」
燐の声は、微かに震えていた…
「…もう会うのは止めよう…なつ」
「えっ…?」
「俺みたいなのと一緒にいたら、またなつに迷惑かけることになる。それに…お前の父親を殺したサタンが俺の親なんだ…、サタンと血が繋がってる俺も同罪だろ…?」
「…っ」
燐の目が、哀しみに溢れているのが分かる…
「お前には幸せになる権利があるんだから…」
そう言って頭に手をのせて撫でてくれる燐。
「違う…燐だって…っ」
燐は静かに首を振った。
「なつ…本当に、愛してた…」
燐は哀しい目をしたまま、静かに笑うとその場を立ち去ろうとした。
「燐…っ」
「!!…っなつ、なんで…」
気付いた時には、私は燐にキスをしていた。
「たとえ燐がサタンの息子だとしても、燐は燐だよ…私の父さんの話だって、燐が悪いんじゃない。燐は何一つ、悪くない…だから、お願い…これからも一緒にいて…?私は今でも燐を愛してるの…燐と会えなくなるだなんて、考えられないから…っ」
「なつ…っ」
次の瞬間、燐に強く抱き締められた。
燐の心臓の音が直に伝わってくる。
「なつ、ありがとな…ありのままの俺を受け入れてくれたのは、お前が初めてだ…俺だって、お前と会えなくなるだなんて耐えらんねぇ…俺も、愛してる…なつ…」
私の唇に燐の唇が優しく触れた。
「…もうぜってー離さねぇからな」
耳元で囁く燐の声。
「っ//…うん!」
再びお互いの唇がどちらともなく触れ合った。
深く、誓いを噛み締めるかのように。
私、今すごい幸せ者かも知れない。
本当に愛してる人と、本当の意味で理解し合えるって、こんなにも嬉しいことなんだね…
燐の告白
(この幸せが、ずっと続きますように…)
2011.7.28
なつ