Book(aoex)

□届かぬ想い
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私は今、想いをよせている人がいる。

名前は確か…

奥村 燐くん

一度しか話したことはないけれど

なんだかすごく…
明るくて、温かくて…

俗に言う、一目惚れってやつだった。

「はぁ…やっぱあの笑顔、素敵だなぁ」

「なつ、なーににやけてんのよ!」

私の親友、花梨が話しかけてきた。

「えっ、私にやけてた!?」

「うん、かなりね。あんた、そんなに奥村くんのこと好きなの?」

「…うん//」

私が奥村くんを好きなのを知ってるのは花梨だけ。(…のはず!)

「まぁ、頑張りなさいよ!なつは可愛いんだから自信持って!」

そう言って私の肩を叩いた。

「…うん!ありがとね、花梨!」

このときの私はまだ、あんなことが起こるなんて、知る由も無かったんだ…



「〜♪」

今日も奥村くんを見れて幸せな私は、鼻歌混じりに歩いていた。

…が、その時、信じたくない光景が目に飛び込んできた。

「しえみ、ちゃん?」

今、目の前で奥村くんと手をつないで歩いているのは、紛れもなく、しえみちゃんだった。

「…そっか、そうだよね。奥村くん、かっこいいもんね…しえみちゃんは可愛いし…」

私は辛くなって、咄嗟に二人の後ろ姿から目を背けてしまった。



私の心が砕けた瞬間だった。

 

―あれから一年。

今でも私は、奥村くんのことを忘れられないでいる。

「ほんと私って、執念深い女だなぁ…」

「なつが奥村くんを、それだけ好きだったのよ。あぁ恋って怖いわねー」

「ちょっ、花梨ったら!」

でもほんとに…自分でも呆れるほど奥村くんが好きみたい。

今だってまだ、奥村くんのことを目で追ってるもの…。

でも、今も昔も変わらないのは、奥村くんが幸せになってくれれば…って想い。

私ってお人好しすぎるのかな。

…あっ、また奥村くんが笑った。

「どうか、奥村くんからあの笑顔が消えませんように…」

「俺が、何だって?」

驚いて振り向くと、いつの間にか私の隣に来ていた、奥村くんの姿。

「い、いつからそこに…?」

「ちょっと前。お前なんかぼーっとしてたぞ?」

「ごっ、ごめん」

「いや、気にすんな!それよりさ、なつ、明日時間空いてるか?」

そう言う奥村くんの顔は、心なしか、少し赤く見えた

そんなこと言われたら

私、期待しちゃうよ…?








届かぬ想い
(初めからお前しか見てないよ、なんて
俺の口から言えるだろうか)



 
2011.7.27
なつ


 
 

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