Book(aoex)
□届かぬ想い
1ページ/1ページ
私は今、想いをよせている人がいる。
名前は確か…
奥村 燐くん
一度しか話したことはないけれど
なんだかすごく…
明るくて、温かくて…
俗に言う、一目惚れってやつだった。
「はぁ…やっぱあの笑顔、素敵だなぁ」
「なつ、なーににやけてんのよ!」
私の親友、花梨が話しかけてきた。
「えっ、私にやけてた!?」
「うん、かなりね。あんた、そんなに奥村くんのこと好きなの?」
「…うん//」
私が奥村くんを好きなのを知ってるのは花梨だけ。(…のはず!)
「まぁ、頑張りなさいよ!なつは可愛いんだから自信持って!」
そう言って私の肩を叩いた。
「…うん!ありがとね、花梨!」
このときの私はまだ、あんなことが起こるなんて、知る由も無かったんだ…
「〜♪」
今日も奥村くんを見れて幸せな私は、鼻歌混じりに歩いていた。
…が、その時、信じたくない光景が目に飛び込んできた。
「しえみ、ちゃん?」
今、目の前で奥村くんと手をつないで歩いているのは、紛れもなく、しえみちゃんだった。
「…そっか、そうだよね。奥村くん、かっこいいもんね…しえみちゃんは可愛いし…」
私は辛くなって、咄嗟に二人の後ろ姿から目を背けてしまった。
私の心が砕けた瞬間だった。
―あれから一年。
今でも私は、奥村くんのことを忘れられないでいる。
「ほんと私って、執念深い女だなぁ…」
「なつが奥村くんを、それだけ好きだったのよ。あぁ恋って怖いわねー」
「ちょっ、花梨ったら!」
でもほんとに…自分でも呆れるほど奥村くんが好きみたい。
今だってまだ、奥村くんのことを目で追ってるもの…。
でも、今も昔も変わらないのは、奥村くんが幸せになってくれれば…って想い。
私ってお人好しすぎるのかな。
…あっ、また奥村くんが笑った。
「どうか、奥村くんからあの笑顔が消えませんように…」
「俺が、何だって?」
驚いて振り向くと、いつの間にか私の隣に来ていた、奥村くんの姿。
「い、いつからそこに…?」
「ちょっと前。お前なんかぼーっとしてたぞ?」
「ごっ、ごめん」
「いや、気にすんな!それよりさ、なつ、明日時間空いてるか?」
そう言う奥村くんの顔は、心なしか、少し赤く見えた
そんなこと言われたら
私、期待しちゃうよ…?
届かぬ想い
(初めからお前しか見てないよ、なんて
俺の口から言えるだろうか)
2011.7.27
なつ