Book(aoex)
□この世に足りないモノ
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「ね、燐。」
私は隣に座ってぼーっとしている燐に話しかけた。
「…ん?なんだ?」
眠そうながらなんとか返答してくれる燐に言葉を続ける。
「人はどうして争って、憎み合って、歪み合うのかな?」
すると、燐は案の定、不思議そうな顔をした。
…そりゃ、そーだよね。
「そんなこと言われてもなー、雪男とかに聞いたほうが良いんじゃねぇか?」
「あ、それはそうかも。ありがと、燐…」
その時突然、燐に抱き締められた。
「…燐?」
「ほんとに行くなよ…冗談に決まってんだろ?俺、お前に告白した時、なんて言ったか覚えてるか…?」
「っ…//うん、覚えてるよ。」
「あんなこと言ったのに…俺、妬いちゃうだろ…っ。」
燐が私に言ってくれたこと、それは今でも、私の心の中に残っている。
―「勉強はできなくてもな…、この世の誰よりも、お前を想う気持ちは負けねぇから。」
…そうだ、この気持ちだ。
この世の中の人たち、みんなが、燐みたいな気持ちを持っていて、
互いを想い、労る心があるのなら、
“争い”なんて、なくなるんだろうな…
この世に足りないモノ
(争いは、悲劇と憎しみしか生み出さない)
2011.8.7
なつ