Book(aoex)

□心の中の闇を照らして
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「ねぇ、夜…」

俺と同じ祓魔師のなつが声をかけてきた。

「何だよ…」

「なんで背中、あんなに傷だらけなの…?」

「…は?」

何を言い出すのかと思えば…

「昨日、お風呂場で夜の背中流してあげた時に、すごい傷があったから心配で…」

…この文脈からだとちょっと疚しく聞こえるだろうけど、違うぞ。

俺が仕事終わって一人で風呂に入っていた所になつがいきなり入って来たんだからな…(ちゃんと服着てたし…←)


「…何でもいいだろ。お前には関係ねぇんだから…」

つい、素っ気なく返しちまう。俺の悪い癖、だな…。

「…聞いて欲しくないような理由があるの…?」

急に、妙に真剣な顔をして聞いてきた。

何なんだよ…。

「…放っておいてくれよ。お前には関係ないって言ってんだろ…」

「!…でも私、夜が心配で…」

「…うるせぇよ。さっきから心配、心配って…俺の過去を知って、お前の何になるんだよ…?上辺だけの言葉なんて、もう沢山なんだよ…!」

 

…思い返せば、いつもそうだった。

数こそ少ないが、俺の過去の境遇を知った人々は皆、口を揃えて、「可哀想」だとか「気の毒」だとか言う。

俺は別に、可哀想でも気の毒でもねぇよ…。

そもそもお前らに、俺の何が分かるって言うんだ。


…どうせこいつも、同じなんだろう。

俺の過去を知って哀れまれるよりは、さっさと何処かに行ってくれた方がマシだ。

そう思っていたのに…。

「…夜、ッ」

「…!」

こいつは、急に俺を抱き締めたんだ。


「何、してッ…」

「…夜、嫌なことを聞いてしまってごめんなさい…。
確かに私は、夜の背負ってきた苦しみや悲しみを知っても、きちんと分かってあげることは出来ないかも知れない。でもね、私のさっきの言葉は、上辺だけの言葉なんかじゃないの…。毎日毎日、夜に怪我や傷が増える度に夜のことが心配で心配で、どうしようもなくなる…余計なお節介かも知れないけど、一応私、医工騎士でもあるし…」

「ッ…医工騎士だから、か…?」

「えっ…?」

「医工騎士だから、俺の怪我や傷が気になるのか…?」

「うーん…それはちょっと違う、かな…」

「…違う?」

違うのか…?
じゃあなんでそんなに心配してくれてるんだよ…。

「…夜のことが好きだから、だと思う。」

「なっ…!//」

好き…?なつが俺のことを、…?

「好きな人のことって、気になっちゃうものでしょ…?」

こいつ…さらっと恥ずかしいことを…

「…俺も、」

「…?」

 

「…俺も、毎日見てても飽きないような奴がいてさ。いつの間にか、そいつを探して話したりするのが日課になっちまって…、今ではそいつに会わないことなんて、考えられないくらい…好きな奴がいてよ…。」

俺がそう言うとなつは少し寂しそうな顔をした。

「…そ、そっか…!夜がそんな人に巡り会えてたなんて知らなかったよー。これで私も安心、かな…」

…どうやら自分のこと言われてるって気付いてねぇみたいだな。

ったく…それなら気付かせてやるか…


チュッ…

俺から体を離そうとしていたなつの体を引き寄せ、触れるだけのキスをした。


「っ…!?//」

「…お前のこと言ってたんだよ…気付けよ、バーカ…」

目に涙を溜めて、今にも泣き出しそうななつに、今、俺が送れる最高の言葉を。

「なつ…愛してるぜ…。もうずっと前から、好きだった…。俺、口下手だからいつも素っ気ない態度とっちまってたけど…好きだったんだ、お前のことが…」


許してくれるか…?、そう俺が囁けば、はにかみながら頷くなつの姿。

「嬉しいよ…夜っ…//」

「あぁ、俺もだ…//これからは、なつに色んなこと、話していくようにするからな…?」

「うん…!」


太陽の様なお前の笑顔が、俺の心の闇をも照らしてくれる。

そうか…光は、太陽は…、俺のすぐ近くで見守っててくれていたんだな…。


俺は、俺の大切な光に、太陽に、契りの、深い口付けをした。








心の中の闇を照らして
(闇は何処へ…)



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