Book(aoex)

□風邪引き 1
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医者に大人しく寝ていなさいと言われ、渋々部屋のベッドで眠っていると、ガチャリと玄関の鍵が開く音。誰だろうと考えるまでもなく、私の部屋に入ってこれるのはただ一人。

「なつ、入るぞー!」
「燐!」

お邪魔します、と遠慮がちに部屋に入ってきた燐を見て少し笑いが込み上げてくる。

「な、なんだよ…」
「別に?燐がちょっと可愛く見えただけ。」
「なっ…」

私がそう言うと、すぐに顔を真っ赤にするところも可愛い。

「そ、そんなことよりなつ、風邪、大丈夫なのかよ?」
「ん、大丈夫だよ。燐がお見舞いに来てくれたから元気になっちゃった。」

ほんとかよ、なんて言いながら私の頭を優しく撫でてくれる大きな手。

「でもまだ熱っぽいな。熱、計ったのか?」
「えーと、38℃?」
「え、それ熱あるじゃん。ちゃんと薬飲んだのかよ。」
「薬、あんま好きじゃない。」
「好きじゃないとかじゃないだろ。ほら、飲めって」

燐が私の口の前に薬を持ってくる。それでも薬が嫌いな私は、燐の持ってきた薬の前から顔を逸らした。

「…そんなに薬、嫌いなのかよ。」
「嫌いなものは嫌いなんですー」

悪態をつくと、燐がコンビニで買ってきてくれた水を口に含み始めた。

「え、燐、何して…んっ、」

口を開けた途端、燐に薬を入れられて、口付けされる。燐の唾液と水とが一緒になって口の中に入ってくる。

「…っ、ぷはっ、」
「ん…っ、何して…っ」
「何って…薬、飲ませてやったんだけど?」

そう言って意地悪く笑う燐に不覚にもときめいてしまった。



 
 

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