過去拍手
□朝餉の歌姫
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炊事当番。
それは伊織がもっとも忌み嫌うものだった。
◆◆◆
伊織は、洗濯や裁縫といったものは千鶴に引けを取らないくらい得意であった。
が、しかし。
料理に関しては、完璧に素人であった。
なんというか…あっちをしてこっちをして、という同時進行作業が苦手らしい。
そんなわけで、伊織は炊事当番が苦手であった。
運の悪いことに、千鶴が土方の使いでいない今日、伊織は炊事当番の日であった。
つまりは、この地獄をひとりで切り抜けなければならない―。
伊織は、朝から絶望を味わっていた。