過去拍手
□朝餉の歌姫
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勝手場に立ち尽くした伊織は、目の前の食材と対峙していた。
献立は考えた。
そういう頭脳労働はいい。
玄米のご飯と沢庵。それと壬生菜のおひたし。
それから豆腐の味噌汁に蕪の漬物。
そう、豪華ではある。
―作れるかは外において、だが。
どこか危ない手つきで包丁を握る。
「猫の手にして支えて…」
初歩の初歩をつぶやきながら、伊織は野菜を切ってゆく。
「お湯も沸かしておいた方がいいかな…」
思い立って、大きな鍋に水を入れて火にかけ、作業を再開した。
…のだが。
彼女が同時進行作業であわてたのは言うまでもない。