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□第一章
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「ふぁ〜」

大きな欠伸が廊下に響いた。場所は来良学園。今は放課後になり、ちょうど生徒は帰宅する時間だ。

「よっ、奈来!!」

先程豪快に欠伸をした少女に、ひとりの男子生徒が勢い良く首に腕を回し、少女に拘束紛いの事する。

「わっ、正臣くん!?」

正臣と呼ばれた男子生徒は、少女に回した腕をほどき、両手を広げながら流暢なイントネーションで言葉を紡ぐ。

「欠伸をする奈来も可愛いなあ。なになにー?昨日は遅くまで何かやってたのか?」

言葉を言い終わると同時に奈来と呼ばれた少女の顔を覗き込む正臣。
そんな正臣を気にも止めずに奈来は重たい瞼を擦り上げた。

「ううん、昨日は早く寝たはずなのに…」

「じゃあ、今日はもう帰んの?」

「うん、帰って寝る。じゃあ、正臣くん、また明日ね、ばいばい」

無気力でその場を去ろうとする奈来を見て面白く無さそうな正臣は、口を尖らせていたが、一瞬でその表情も何かを企んだような表情へと変わった。

「そうかー、せっかく今日は杏里や帝人も誘って四人でどっかに行こうとしたんだが…しょうがないなぁ、奈来は来れないのかー。三人で行くしかねぇな」

ちらちらと奈来を見て反応を確認する正臣。奈来は足を止め、正臣の方を振り返った。

「行く!行くからっ!仲間はずれにしないでよーっ」

若干涙目で訴えて来る奈来を見て、正臣は頬を緩めると、去り際に奈来の頭にぽんと手をついて靴箱に向かう。

「冗談だよ。だからそんな可愛い顔するなって」

「冗談かぁ、良かった…」

ほっと肩をなでおろし、奈来も正臣に続いて靴箱に向かう。

「じゃあ、今日は久しぶりに池袋満喫しようか!!」






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