長編

□02
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コンコン……

「はい」
「来たよ神童」


花を持って、もう見慣れてしまった病室の扉を開く。神童はベッドに座ってテレビを見ていた。


「神童何見て―…」


テレビ画面に目を向けるとこの間の雷門の試合が映っていた。神童はそれをずっと見つめていた。
気まずい雰囲気が病室の中を流れる。
神童がゆっくりと口を開いた。


「皆上手になったな」
「……ああ」


神童は懐かしむ様に言った。

…神童は生まれつき心臓の病気を患っていた。
それに加えて体も弱かった。
しかし神童には幸か不幸か、天が与えたといっても過言では無い程のサッカーの才能と音楽の才能があり、入退院を繰り返しながらではあったがサッカーを続けていた。

サッカーをしている時の神童はそれはとても活き活きして輝いていた。
雷門中サッカー部に入るとたちまちその才能が認められキャプテンというポジションについた。

"フィールドの演奏曲を奏でる男"

"神のタクト"

と持て囃され雷門の教師も一目おいていた。
そして俺はそんな神童を見ながら一緒にサッカーをするのが好きだった。


…そんな幸せも長くは続いてくれなかったが。

無理をしてか弱い体に鞭を打ちサッカーを続けるのには、神童の体は耐えきれなかった。

化身を発動するのにはかなりの気力と体力を消耗する。神童はそれを知りながら革命の風をより大きなものにする為に、雷門のサッカーを守るために、チームメイトの制止の声を聞かずに化身を発動しシュートを2本決めた。


ピ――…、と試合終了のホイッスルが鳴り観客が物凄い歓声を送ったと共に、神童はフィールドに倒れ込んだ。

あの汗を流し苦しそうに胸を抑える神童を、俺は一生忘れられないだろう。

その後神童は緊急入院し、サッカーという生きる糧を奪われた。





「天馬は大丈夫か?あいつは周りを良く見ないで突っ込むから心配だ。それに剣城ももう少し仲間に頼らないと雷門のエースストライカーを任せられないな」


「……神童」


神童はテレビの電源を消して俺に一人一人の癖や弱点を克服出来たかと心配していた。
俺はいても立ってもいられない気持ちになり、神童を抱き締めた。



「…霧野?」
「神童、お前はもっと自分を大切にしろ。…今はお前の体を第一に考えるんだ」


神童は黙って儚く微笑んだ。




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