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□恋を欲しがるくちびる
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「皆お疲れ様〜!」
「早く帰ろうぜ」

部活後それぞれが帰宅する準備をする。
ポタポタと滴り落ちる汗を拭い、俺も同様に着替えようとした。

「三国さん」

後ろから誰かに声を掛けられたと思い振り向くと柔らかな笑顔を浮かべた神童がいた。
練習後で汗をかいているというのに何故か神童はそれが綺麗に見えた。

「どうした?」
「あの、このあと時間ありますか…?」


控え目ではあるが神童からの誘いはそれはもう嬉しくて「ああ、勿論だ!」と大声で返してしまった。すると神童も一緒に嬉しそうに微笑む。


「それじゃ俺ん家くるか?」
「えっ、いいんですか?」

ただ汚いがな…と一言付け足すと神童は「大丈夫です!」と目を輝かせて言った。



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「お邪魔します」

律儀に挨拶をして脱いだ靴を揃える神童からは育ちの良さが滲み出ている。

「今日は家に誰もいないんだ。先に部屋に行ってていいぞ」

母さんは仕事で夜にならないと帰って来ないのでこの家に神童と2人きりという事になる。
自分で誘っておきながらもバクバクと大袈裟に音をたてる心臓を止める事は出来なかった。

オレンジジュースを持って部屋に行くと、神童はきょろきょろと辺りを見回していた。神童からしたらこの一般的な家も珍しいんだろうなと思いつつジュースを神童に差し出す。


「すみません、ありがとうございます」

礼儀正しくコップを受け取りコクリと神童の喉が少しだけ飲み物を通すのを見つめる。
そこらで販売している普通の飲み物とコップだって、神童が使うとそれなりの物に見えてくるのが不思議だ。

「三国さん…?座らないんですか?」
「あっいや、座るよ」

神童に見惚れてたなんて言える筈もなく苦笑いをしながら座る。いつも見慣れた部屋なのに神童がいるというだけで随分と変わって見えた。

少しだけ神童の近くに寄ると、神童も少しではあるが俺に近付いてくれた。ふわりと石鹸のような花のような良い香りが鼻を擽る。

「神童、キスしてもいいか…?」
「っはい」

肩を掴むと凄く華奢でこの体であんな強力なシュートをしているのかと驚いた。顔を近付けキスをする。 リップ音をたてて離れようとすると、ぐいっと服の袖を掴まれる。


「さ、三国さん…っもう一回…」


…神童は凄まじい必殺技を持っていると思った。


end.

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