メイン2(イナgo

□いつか奪ってみせるよ
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毎日がつまらなかった。大好きなサッカーが出来ない。
それに病院にいたって何をする訳でもなく、ただ時だけが過ぎて行った。

…でもそんな僕の日常に風を起こしたのは天馬だった。



「太陽、お見舞いに来たよ!」
「天馬っ、来てくれたんだね!」


扉が開くと僕の待ち焦がれた天馬がいた。
嬉しくてベッドから走って天馬に衝突する。


「痛てっ、太陽〜」
「天馬っ…!」

あはは、と笑いながら俺の頭を撫でてくれる天馬の手がひどく心地良かった。 天馬の手を引いて椅子に座らせる。


「昨日ね、剣城が俺にクッキー焼いてくれたんだ!」
「…剣城君が?」
「剣城凄く料理が上手でね。だから太陽にもお裾分け!」


そういって笑顔で紙袋を渡された。
ありがとう、と笑顔で言って受け取りベッドの端に置く。


「あっ、花瓶に水入れてくる」

天馬はオレンジ色をした花瓶を手に取って、小走りで水道へと向かって行った。

天馬が出ていってまた静かになった病室。
俺は紙袋を開けて、中のクッキーを取り出した。


パキッと良い音をたてて割れたクッキーを口の中に放り込む。

剣城君が天馬の為に、焼いたクッキーを。


「へえ、凄く美味しいね。…天馬への気持ちが詰まってる」


目を細めながらクッキーを床にばらまく。
割れてしまったクッキーを口元を緩くしながら見つめた。
ガラガラ、と天馬が水をたっぷり入れて戻ってきた。僕は顔を歪め大袈裟に咳をする。


「太陽?…どうしたの!?」
「…ッは…っはぁ、はぁ…」


自分の胸に手を当てて息を荒くする。
じわりと涙を浮かべながら天馬を見上げると、天馬は慌てて俺の背中を擦っていた。


「太陽っ」
「つ、るぎ…君のっ……クッキー…っう」


さっき自分で叩き落としたクッキーに目をやり拾おうとする。
すると天馬が俺に大丈夫、と声を掛けながら拾ってくれた。


「大丈夫、また作って貰うから!それよりも…看護師さん呼んだ方が…!」
「ごめ、っ…ごめんね…、っ大丈夫…天馬が、側に、いてくれれば…は、っ」


必死に俺の背中を擦っている天馬に力強く抱き付く。天馬は俺が苦しがっていると思ったらしく、抱き返してくれた。


…カタン。


病室の扉が開き、藍色の髪が揺れた。






end.

剣城君が見てしまいました。太陽君が悪←

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