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□我が儘かも知れないけれど
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練習が終わり流れる汗をタオルで拭っていると、携帯が鳴った。
ディスプレイを見てみると兄さんからの電話だった。何かあったのかと、タオルを投げ捨て急いででる。

『あ、京介?』


落ち着いたトーンの声に緊急事態ではないと分かり胸を撫で下ろす。
どうかしたかと聞くと兄さんは少し間を開けて病院に来てくれないか、と言った。
了解してユニフォームを脱ぎ急いで制服に着替える。

「剣城、一緒に帰ろうよ!」
「…狩屋とでも帰れ」


えー!剣城もー…と項垂れる松風に少し罪悪感を感じながら、荷物を持ち病院に向かった。







「兄さん、来たよ」

ベッドの上で外を眺める兄さんに声を掛けるとやっと気付いた様でこっち、と手招きされる。


「珍しいね…兄さんから呼ぶなんて」
「そうか?」


さっき寄り道して買ってきた林檎と新しいサッカー雑誌をテーブルに出すと、兄さんは喜んでくれた様だった。
真っ赤な林檎を掴んで果物ナイフで皮を剥く。
しゃり、と心地の良い音が静かな病室に響いた。


「京介」
「ん?」


林檎から目は離さずに相槌を打つ。


「…天馬君と仲良いみたいだね」
「!」


俺と松風が恋人であるという事は兄さんには内緒にしていた。
兄さんは昔から勘が良かったからバレないようにと松風の話をしないようにしていたのに。


「…そんな事ないよ」
「そうか?」


ふふ、と兄さんは微笑むと上半身を伸ばし俺を抱き締めた。
ふわりと松風とは違う良い香りがする。


「京介は、ずっと俺の側に居てくれるよな…?」


確かめる様なその声に俺は心が締め付けられた。

優しく俺を包む兄さんの腕を振りほどく事なんて、到底俺には出来なかった。

「うん…ずっと側にいるよ」




俺にはどちらかを選ぶ事なんて出来ない。

嬉しそうに微笑む兄さんにズキン、とまた心が痛んだ。





『我が儘かもしれないけれど』




(どちらも大事だというのは、そんなにいけない事なのか)




end.

大変遅くなり申し訳ありません…!
優京なのに天京要素がチラチラと…
こんなもので良ければ、riho様のみお持ち帰り可能です(^^*)

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