間章達
□間章1
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[間章1]
私と譲くんは、朔と歓談しながら九郎さんと弁慶さんに続いた。
譲くんは始終辺りを見渡し、一人でブツブツと言っている。
これから先、仕事とかをしなければ、この異世界で生き抜く方法が無いだろうという理由からだと思う。
私が朔に聞くのは、美味しい料理とか京がどんな町かとか、そんな話しばかりなのに…譲くんは貨幣価値とか、同じように京について聞くのも、治安がどうかとかで……私の方が歳上の筈なんだけどなぁ。
これは譲くんがしっかり者だと褒めるべきか、私が無計画だと反省するべきなのか。
「望美どうしたの?難しい顔をしているわよ」
「朔…私と譲くんはどっちが普通なのかな?」
「……待って、話が全く見えないわ」
朔が困ったような顔で私を見るから、ついポツポツと話し始めた。
「私と譲くんは幼馴染みなんだけどね、私の方が譲くんより一つ歳上なの…それで…」
そこまで言って、朔を見れば明らかに見比べている。
「えっと、譲殿の方が歳下なの?」
「そうだよ。なのに、譲くんはしっかりしていてさ…」
「…そうね、確かに譲殿はしっかりしてるわね」
そう言って笑う朔に、私は私が考えなしなのかと聞けなくなった。
でも、思い返せば、武器なんて学校行事で博物館に行った時位しか、見たことも無かったのに、どう見ても死んでる人達に挑んで行ったのは、計画的ではないと思う。
だけど、あの時武器を持たなければ少なくとも白龍の命は無かったんだから、計画とか以前の問題なのかも。
気付いたらこう…保護されてる訳だし…ここに来たから、八葉も二人見付かったんだし…うん、計画性なんていらないね。
「望美、望美、ちょっと、大丈夫?」
「えっ」
「ボーッとしていたわよ」
「ご、ごめんなさい。私には計画性なんかいらないって考えてたから」
「あなたに計画性が必要無いかは解らないけど、色々考え過ぎて動けなくなる位なら、計画なんか立てなくても良いんじゃないかしら?」
朔がそう同意してくれたのに対して、譲くんが苦笑を浮かべているのが見えた。
「譲くん、どうしたの?」
「春日先輩はもう少し位、計画性と緊張感と警戒心を持った方がいいと思いますよ」
「ちょっと待って!それどういう意味!?」
怒りながら問えば譲くんが、苦笑しつつ続ける。
「先輩に計画性があったら驚きますが、少なくとも警戒心は持って下さい」
「譲くん!私のが歳上なんだよ!!警戒心が無いって、子供じゃないんだから大丈夫だよ!!」
「それは、わかっているんですが…心配で…」
私が次の言葉をいう前に白龍が心配そうに、袖を掴んだ。
「神子…?」
ああ、まただ。
どうして私は、こんなに小さな子に心配かけてるんだろう。
「ごめんね、白龍。もう大丈夫だから」
「神子、計画性ってなに?どういうものなの?」
計画性って、計画性だよ。
なんて答える訳にもいかず、私は押し黙る。
「計画性って言うのは、未来を見据えて考えて行動するって事だよ」
「神子にはそれが出来ないの?」
「少し、苦手なんだよ」
譲くんが代わりに説明してくれる。
それを聞いて白龍が少し考えるような仕種をする。
本当に白龍可愛い。
どこの子だろう。
こんなに可愛いんだから、親だっていなくなったのが心配でならないだろうなぁ。
「神子、神子が思うように動いたらいいよ。神子がいいと思うことが、正解だよ」
可愛い笑顔でそんな事を言う白龍に、力が抜ける。
京に着くまでの小さな出来事。