本編達

□一章 宇治川、霧に惑う
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二巡目・天地青龍&天朱雀ルート
一章 宇治川、霧に惑う

【迷い込んだ異世界の宇治川。そこは怨霊を操る平家と、源氏が争う戦場だった】

 逆鱗の力で時空を遡り、眼を開ければそこは、川だった。

 「ここは……宇治川なの?」
 「フシュウゥゥ…!」

 怨霊がいるのを確認して、そばにいる朔と白龍の位置を確認して気付く。

 「朔、白龍!!そうだ、あの時怨霊に囲まれて!朔、白龍!今、助けるよ!」
 「貴方は…?私の事を知っているの?」

 朔が不思議そうに問うのを聞き、当然普通は気になるだろうと思いはしたが、今は説明している暇はない。

 「話は後だよ。今は…」
 「ええ、今は怨霊を沈めましょう」

 朔の同意を受けて、私は剣を構える。

 「あれは怨霊、悲しみや痛み、嘆きが降り積もった存在よ」
 「怨霊……」

 再確認する。
 彼等は恐ろしい妖怪等ではなく、戦の被害者なのだと。

 「大丈夫、私もまだ戦えるわ。あなたの事は私が守るから」
 「神子、龍の加護をあなたに…戦う力を」

 小さなな子供の姿をした白龍が、祈るようにそばに寄り添う。
 私は怨霊武者に白龍と共に術をかける。
 初めて戦った時は、朔の協力を得ても怨霊武者が反撃して来たが、今はそれもない。
 驚くほどすんなりと、怨霊武者を倒す事に成功した。

 「やった…!倒したよ!」

 しかし、倒した筈の怨霊武者は放置すれば何度でも立ち上がる。

 「怨霊を封じる。朔、手伝って!」
 「封じる?あなたは…………まさか…いいえ、きっとそうなのね」

 祈るように、願うように、朔は瞳を閉じて呼吸を落ち着け始める。

 「白龍、私に力を貸して。私は、あの怨霊を封じたい!」

 白龍は私を真っ直ぐに見て、頷く。
 鈴の音が響く。

 「めぐれ、天の声!」

 私が言う。
 そして、朔がそれに続いて言う。

 「響け、地の声!」

 私と朔の声が重なる。

 「「かのものを封ぜよ!!」」

 光が満ちて、怨霊武者を包み……光の中で怨霊武者が消えた。

 「神子!すごい!!封じたね」

 白龍が嬉しそうに笑う。
 そして、隣から朔の声が聞こえた。

 「封印の力…怨霊を封じる力。業から解き放つ浄化の力……貴方は白龍の神子なの?……私の対、なの?」

 不安そうに、声を少し震わせて問う朔に、自然と笑顔になる。

 「うん、そうだよ。私、白龍に力を借りてる神子なんだ」

 答えれば安心したように朔が笑う。

 「良かった。きっとそうだと思ったわ。私は朔。梶原朔というの。貴方の対、黒龍の神子よ」

 自己紹介…っていうのも不思議な感じだけど。

 「私は春日望美、よろしくね」
 「望美……満ちた月ね。暗闇を照らす、美しい光の名」

 そう言って朔は優しく笑った。
 そしてそのまま表情を曇らせる。

 「私…本当はここに来るの嫌だったの。私は怨霊と対話する事が出来ても封じる事は出来ない。鎌倉殿は怨霊を鎮めよと命じられたけど、その力も足りなくて…怨霊の声ばかりが響いて……私には何も出来なくて…貴方が来てくれて本当に、良かったわ」

 初めて聞く弱音。
 本当に初めて来た時は、朔は私と白龍を守らなければいけなかったから、話すなんて出来なかった本音の一部を、今、初めて聞けた。

 「朔…」

 込み上げて来そうになる色々な感情を押し込めて、冷静に言う。

 「怨霊はまだきっといるよ。朔、白龍、ここは危ないから戻ろう。他の人と合流した方がいいよ」
 「そうね。橋姫神社に向かいましょう。あそこまで戻れば陣まですぐにつけるもの」

 朔の言葉に私は頷き、確認する。

 「今は橋姫神社へ行けばいいんだね」

 私と朔と白龍は、そうして橋姫神社へと向かう事になった。
 しかし少し歩くと、再び怨霊武者に出くわした。
 時空を飛んでる間に記憶を落としたのか、それとも色々あって忘れていたのか…あの時と同じ場所で怨霊に出逢ってしまった。

 「くっ、橋姫神社に行かなきゃいけないのに……」
 「グガァァ…ッ…!!」

 怨霊は私の焦りなど御構い無しだ。
 そんな時、やはり朔は冷静だ。

 「簡単には通してもらえないのね」
 「でも、これだけなら…さっきだって、大丈夫だったんだから!!」

 私が自信を持って言えば、白龍が怯えた声をあげる。

 「神子、向こうに!あっちにもいる!!」

 周りを見れば、確かにいた。
 朔が焦りの色を見せる。

 「囲まれてる?何体いるというの!?」

 だめだ、ここを逃げなきゃ!

 「一体でも倒して、隙を作ろう!」

 刀を構えて追い払おうとする私を朔が止める。

 「いけない!望美!!」

 強くなったと思い生まれた隙をつかれ、調子に乗るなと言わんばかりに繰り出された敵からの攻撃に、私は力負けする。

 「あっ!!」
 「春日先輩!」
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