本編達

□二章 京の花霞
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二巡目・天地青龍&天朱雀ルート
二章 京の花霞

【戦場で源氏と共に戦った望美は、九郎に認められ源氏の一員として京に向かった】

 私達は、京という町にやって来た。
 京はこの世界の中でもすごく大きな町だそうだ。
 道を歩いて行くと、大きなお寺や神社が沢山ある。
 私達はまた、朔と景時さんの京邸にお世話になる事になった。
 京邸についてから、白龍が力を失った龍神である事を皆に話した。
 龍脈を流れていた力を怨霊が奪ってしまっているから白龍は、龍の形になれない。
 怨霊を封じれば、その力が取り戻せるんだけど……。
 それを聞いた弁慶さんが、ゆったりとした口調で、何かを考える仕草で言葉を発する。

 「宇治川で怨霊を封じた時に見えた、あの光。あれが龍脈を流れるべき五行なんですね。平家が五行の力で怨霊を作り出しているとは知っていましたが……」

 弁慶さんの言葉を受けて、白龍が無邪気に笑う。

 「神子が封印したから、五行の力、解放されたんだよ」
 「それにしても、この子が龍神だなんて……春日先輩、どうして解ったんですか?」

 譲くんが白龍を訝し気に見てから、私に視線を移す。
 私は違和感を出さないように、精一杯の説明を心掛ける。

 「うん、色々ね。宇治川で封印の事教えて貰ったり……」

 逆鱗で時空を越えたし…。
 大きくなったのも見たし…。

 「ね、白龍」

 白龍に笑いかければ、白龍は嬉しそうに笑い返してくれる。

 「うん」
 「先輩は『白龍の神子』だからわかるのかも知れませんね。俺にはまだ、どうも信じられませんよ」

 譲くんの言葉に九郎さんが同意する。

 「そうだな、俺も同感だ。こんな子供が京を守って来た龍神にはとても見えん」

 九郎さんも譲くんも、白龍が龍神だなんて信じられないみたい。

 「弁慶さんと景時さんは驚かないんですね」

 視線を向ければ、弁慶さんは笑顔で答えてくれる。

 「僕は元々、そうかなって思っていたんですよ。黒龍が、人の姿を取って神子に会いに来た話も聞いてましたし、何しろこの子は僕より、ずっと龍神に詳しいみたいですから。僕も結構、勉強したんですけれど、本人相手じゃ敵わないな。景時はどうなんですか?」

 話を振られた景時さんは、焦った様子で口を開く。

 「オレ?オレは特になんかある訳じゃないよ。ほら、陰陽師の勘というかそんな感じで」
 「……この子が、黒龍と似ているからですね。兄上は黒龍に会った事があるから」

 景時さんの言葉に朔が冷静に言う。
 景時さんは困ったように言葉を濁す。

 「あ、ああ…まあ…ね〜ちょっと似てるかなって」
 「気を遣わないで。私も白龍と会った時、似ていると思いましたから」

 朔がそう言えば、白龍が話始める。

 「黒い方と私は、同じ龍の半分。対だから、人を模してもきっと対になるよ」
 「そうね、もう少し、年は上だったけどどこか似ているわ」

 朔が懐かしそうに、嬉しそうに、けれど何処か切な気に白龍を見る。

 白龍も力を少し取り戻したら大人になってた。
 黒龍ってきっと、そんな感じだったんだろうな。

 そんな事を考えていたら、九郎さんが口を開いた。

 「だが、白龍が龍神だというのはいいとしてだ。例え龍神だと言っても今は大した力がある訳じゃない」
 「うん」

 九郎さんの言葉に、白龍が目に見えて落ち込んだ。

 「あっ、いや…子供が戦力になる筈がないのは当たり前だ。お前のせいじゃない。……どうも俺は、言い方が悪いな」

 九郎さんが白龍の反応を見て困ったように言えば、弁慶さんが口を開く。

 「白龍が力を取り戻すにも、まず、今戦える人が必要なんですよ。軍としても人の補充は必要ですし、腕のたつ人も欲しい」
 「やはり、先生のお力をお借りするか……」

 九郎さんが思案するように言えば、弁慶さんが確認するように言う。

 「九郎の剣の師ですね」
 「ああ。俺が子供の頃…まだ鞍馬寺にいた頃に剣を習った。俺も随分稽古に打ち込んだが、まだ足元にも及ばない。あの方こそ、真の武を極めた方だ」

 九郎さんは全身で、尊敬の意を表している。

 「リズヴァーン先生ですね」

 私が確認すれば、九郎さんは驚いた表情を見せる。

 「お前、知っているのか?」
 「宇治川で、道に迷っていたところを助けて貰ったから」

 私がそう答えれば、譲くんも思い出したのか困ったような表情になる。

 「あの時はすみません。お礼を言いそびれてしまいましたね」
 「そう言えば、望美とあの人は知り合いなの?」

 朔が私を見てそう聞くから、私もつい正直に答えてしまう。

 「私も、先生に剣を教えて貰ったんだよ」
 「そうだったんですか。でも、いったいいつの間に……」

 私の言葉に譲くんが当然の疑問を抱く。
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