本編達
□二章 京の花霞
1ページ/22ページ
二章 京の花霞
【戦場で源氏に保護された望美は、朔達と共に京の町へ向かった】
私達は、京という町にやって来た。
京はこの世界の中でも、すごく大きな町だそうだ。
道を歩いて行くと、大きなお寺や神社が沢山ある。
「これが京の町かぁ…何だか、映画村とかみたいだね」
「ふふっ、全く……先輩はのんきですね。俺はこれからどうしたものかと、そればかり考えているのに」
譲くんが苦笑を浮かべつつ、でも何処か気の抜けた笑い方をした。
それを聞いていた朔が口を開いた。
「ねぇ、私の家に来てはどう?京に邸があるの」
朔の家は本当は鎌倉にあるんだけど、お兄さんが京にも邸を借りてるんだって。
何処にも行く当てのない私達は、朔の家に連れて行って貰った。
朔の家について、譲くんに話し掛けた。
「じゃ、譲くんの言う通りこれからどうしたらいいか考えなきゃね。お世話になりっぱなしって訳にはいかないし」
「そんな、気にしなくていいのよ。ゆっくりしていってね。もし良ければ、ずっといてくれても、私は嬉しいわ」
朔の言葉に譲くんが返す。
「本当に、良くして貰ってすみません」
それから今度は私に向かって言う。
「落ち着いて、元の世界に帰る方法を探す事が出来そうですね。今は、どうやったら元の世界に帰れるか、皆目見当が付きませんから」
「前の白龍の神子も、異なる世界から来たと言うわ。その方の事を知る人なら、解るのかも知れないけれど。ただ、前の白龍の神子が自分の世界に帰れたのかどうかも解らないのよ」
朔が真剣に考えてくれる事が嬉しかった。
「もしかしたら…帰る方法は見付からなかったかも知れないと言う事ですか?」
譲くんがそう言うと、白龍が訪ねる。
「譲達は、元の時空に帰りたいの?」
「そうだな。帰りたいと思うよ」
譲くんが答えると、白龍は私を見た。
「神子は?帰りたい?」
「元の世界に帰る事が出来るとするなら…はぐれちゃった将臣くんを見付けてからだよ」
私がそう答えると、譲くんは少し顔を歪めた。
何か思う所があるのかも知れない。
そして、朔が不思議そうに訪ねてくる。
「『将臣くん』って?」
「私の友達で、譲くんのお兄さん。この世界に吸い込まれた場所で、はぐれちゃったんだよね。心配だな……無事だと良いんだけど」
私が言い終わると、譲くんが笑顔で同意してくれた。
「ええ、そうですね。兄さんの事だから、何があったて平気だとは思いますが……けれど確かに探した方が良いでしょう」
「時空の狭間でいなくなったの?」
白龍が首を傾げて聞いてくるのを見て、私は答える。
「うん…あの場所にもう一度行ければ、会えるかも知れない」
「わかった。それが神子の願いなら」
そう言って白龍は何かの光を放った。
それを見て朔が呆然と呟く。
「これは……」
「……だめ、足りない。狭間が開かない」
白龍が悲しそうに言うと、譲くんが尋ねた。
「白龍、今のは一体何だ?あれも宝玉の力みたいなものなのか?」
「ううん……八葉とは……違う」
白龍が小さく首を振って答えると、私の横から声がした。
「神の力ですね。龍神の力、その片鱗なのでしょう」
「べ、弁慶さん!?いつの間に?」
驚き過ぎて声が上ずってしまう。
「ふふっ、声はおかけしましたよ?でも、皆集中していたみたいだから、びっくりさせちゃいましたか?」
そして弁慶さんは朔を見て言った。
「朔殿、あなたもご存知だったのでしょう?この方は龍神、応龍の陽の半身『白龍』だと言う事を」
朔は困った顔で言った。
「ごめんなさい、望美。私も確信があった訳ではなくて」
「この子が……龍神…?ちょっと待って下さい。龍神って神様なんでしょう?」
譲くんが問えば、朔は苦しそうな、つらそうな顔で頷いた。
「そうね。龍の姿の神の名よ。私を神子に選んだ黒龍は、黒く光る美しい鱗を持った龍だった。けれど、龍脈を流れる力が止まって…少しずつ体が保てなくなって…鱗が一枚ずつ、消えていって、そして、龍の姿ではなくなったわ」
「人の姿になったの?」
朔に私が問えば、朔は俯いていた顔を上に向けた。
「えぇ」
「龍と神子、繋がってる。神子が人だったから私も、人を模した。神子、私はちゃんと人に…見える?」
可愛い白龍を、抱き締めたい衝動を押さえた。
「うん、人間に見えるよ」
そう答えると白龍は笑顔を見せてくれた。
「良かった」
そんな白龍に弁慶さんが問う。
「白龍、あなたが、八葉と神子を選んだんですか?」
「ううん、八葉は宝玉が選ぶ。神子は、時空と……うん、私が」
頷く白龍に弁慶が再び問う。
「望美さん達をこの世界に連れてきたのは、あなたなんでしょう?」
「うん」