BOOK 月下美人

□八話
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「あ、あそこですか?」


ついた店先には沢山の着物が並べられていた。

様々な色の着物があって少し目がチカチカする。

さっそく私は店の中にはいって買う着物をさがした。が、どれも高そうな着物ばかり。


「うー…ん。」

「おや、いらっしゃいお嬢さん。着物をお探しかい?」

「ひゃっ。え、っと…」


私の後ろに立っていたのはここの店の人らしいおばあさんだった。

びっくりした、急だったから話しかけられたとき心臓が止まるかと思った…

おばあさんを見ると誠君は店の品物を指さした。


「なあ、ばあさん。これ高くないか?」

「あ、それ…やっぱり分かるかい?最近、近くで戦があったらしくてねえ。

そのせいか山の向こうの町から貰っていた布が高くなっちまったんだよ。」


全く戦ってのは困ったものだね。そう言っておばあさんは肩をおとす。


「戦か…」

「…近くで戦が?」

「ああ、大丈夫だよ。ここらはなにも被害はないからねお嬢さんが心配することは何もない。

それより着物だったね。ここに売り出してある着物はみんな高いが裏に行けば安くで売れる着物もあるよ、来るかい?」


頷くとおいで、とおばあさんは私たちを案内してくれた。

案内されて付いたところは店の奥の蔵。そこには売り物にだされていないであろう着物がいたるところに置かれている。


「綺麗な着物が沢山ですね」

「ふふっ、そうかい?そう言ってもらえると嬉しいねえ。」

「ここの着物は売りに出してないのか?表に出さないと売れないだろう?」

「いいのさこれは私の手作りでね。普段は売りに出せないがこっちも商売なんでね。

まあ、こんなので悪いが気に入ったやつがあったら言っておくれ」

「店先の着物に負けないくらい綺麗な着物だと思うんだけどなあ…。あ、見て回ってきますね」

「ああ。私はここで待ってるからゆっくり見ていきなさい」

「…俺はちょっと外に出てるな。外にいるから終わったら呼んでくれ」

「はい、分かりました。」


私は少し小走りに宝物を探しに行くような気分で着物を見に行った。

少し離れてからおばあさんはくつくつ笑う。


「まったく嬉しいこと言ってくれるねえ。それにあの顔、あんなに楽しそうに見てくれるなんて

…まだまだ捨てたもんじゃないねこの仕事も」






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