BOOK 月下美人
□一話
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人気の無い場所にぽつんと佇む一軒の茶屋の前。
その茶屋の周辺で何人かの人があわただしく動いていた。
「捜せっ!一刻も早く見つけだすのだ!!」
「はっ!」
そしてもう一人。見渡す限りの青。
雲ひとつない快晴の空の下、道のそばの暗い林の中の一本の木の影。
そんなところに一人の少女がいた。
少女は木の幹を背にギュッと手を握り締め唇を噛み締めると
ポツリと苦しげに言葉をこぼした
「…もうあそこになんて戻りたくないっ。」
だんだんと、あの自分を捜す声が近くなる。
「ここでは時期見つかってしまう。早くここから離れたところへ行かないと…」
少女は木の陰へと消えていった。
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