BOOK 月下美人
□七話
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「ま、町ですか?」
朝起きて突然言われたことは今日の仕事は休みだということと、
今日町に行ってみてはどうだろうかという咲さんの提案だった。
いきなりの提案に私は驚いた。
町に行くのは私の給料が出てからだとそれまではこの学校のなかでの生活だと思っていたからだ。
「せやねん。月ちゃん自分の物ほとんど持ってないやろ?自分の着物とか欲しいと思うし。
何より来てから一回も外に行ってへんみたいやからな。気分転換に行ってくるとええ」
「たしかに、いつまでも咲さんのを借りているのは悪いですし。
でも私、町への行き方も知らないしお金もなくて…」
「大丈夫!心配せんでええお金は給料から出すし、ちゃんとそこは考えてるって心配せずに行ってき。
あ、お金は朝ごはんの時に渡すからな」
「は、はい…分かりました」
そう言うと咲さんは満足そうに頷いて自分の部屋に戻って行った。
今日の仕事は休み、町に行くのもまだ早い時間。一体どうすればいいのか…。
「やることが…無い…」
取り敢えず身支度だけでも済ませておこうと着替える。
後は髪の毛を結うだけになって紐に手を伸ばしたとき、昨日もらった簪が目に映る。
せっかく綺麗な簪を貰ったのだけれどなんだかもったいなくて使いづらい。
「壊しちゃったりしたら嫌だし…今日付けるのは止めておこうかな…」
簪を大切にしまって、身支度もすっかり終えてしまった。
…暇だなあ、朝ぐらい仕事させてもらえばよかったな。
そう思いながら座って壁にもたれかかる。
今日はいい日差しだからとても暖かいさっき起きたばかりなのに眠気が襲う。
まだ朝ごはんまで時間はあるし少しくらい…と私は静かに目を閉じた。
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