T-SS


□全さち(3Z)
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※幼なじみお隣さん設定の3Z


ペンを走らせる手をあやめはふいに止めた。顔を上げ、窓の外からもれる灯りを眺め、それから机の端の携帯を見つめる。
時刻は2時を過ぎていた。小さく息をつく。
明日も学校がある、遅刻をするわけにはいかない。明日は現国の授業がないので、朝のHRに出なければ彼に会うチャンスが減ってしまう。
あやめは立ち上がり、細く開けていた窓をカラカラと開いた。
向かいの窓は全開に開け放たれている。テレビの音が小さく聞こえ、明るい部屋の中は丸見えだ。
「全蔵」
さして大きくもない声で呼び掛けると、ベッドからむくりと起き上がる姿が見えた。ぼさぼさの髪を掻きながら、窓際にやってくる。
「まだやってんのか」
「もう寝る」
そうか、と頷きながら、全蔵は欠伸を噛み殺した。
「おやすみ」
「…おやすみなさい」
あやめはゆっくりと窓を閉め、カーテンを引く。
寸前、全蔵の部屋の灯りが消えた。
「…待ってなくていいのに」
それは本音だが、先に寝ていいとは言えずにいる。
受験勉強をする自分の部屋の灯りが消えるまで全蔵の部屋の灯りも消えないと気づいたのは、夏の終わりだった。全蔵は何も言わない。ただ起きている。
初めは素知らぬふりをしていたが、胸につかえる疼きが思考までもを支配し、あやめはついに我慢ができなくなった。
眠る前、全蔵を呼ぶ。
おやすみを言うと、その日は眠りが深い。翌朝の目覚めもよく、勉強にも身が入る…気がした。次第に、願掛けのようなものになった。
灯りを消し、眼鏡を外してベッドにもぐり込む。枕の下には愛しい彼の写真がある。
彼の夢が見れますように。
あやめは瞼を閉じた。




診断メーカー、全さちへの3つの恋のお題より【眠りにつく前に】
全→さち→銀。
さっちゃんにとって眠る前に全蔵の顔を見ることと、枕の下の銀八先生の写真は同等の願掛け。

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