非公開兎物語
□天然ハニー
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「虎徹さんから借りました。YUKATAって言うんですよ」
そう言ってイワン君は私の目の前でくるりと回って見せた。
黒い生地に、淡くピンクに色づいた牡丹の花が散りばめられていて、その一つで紫の蝶が羽を休めている。
子供のようにあどけなかったイワン君が急に大人びて見えた。
「とても綺麗だよ。」
平静を装い笑って見せた。
私が犬なら飛びついているところだったよ。
しかし、日本の男性は皆、こんなにも華やかなものを羽織っているのか。
「あ、これ女性物のようですね。これはキースさんの分です。僕が着付けてあげますね。」
だろうね。言葉には出さずとも、うんうんと頷いて見せた。
そしてイワン君から私の分のYUKATAを受け取る。
「私もその、華やかな服を着るのかい?」
「キースさんのは男物ですよ。」
手を出せずおろおろしていれば、いつの間にかイワン君の手によって私はYUKATA姿になっていた。
着付け終わったイワン君はYUKATA姿の私をじっと見つめている。
「どうだい?」
沈黙に耐えきれずそう問えば、イワン君は顔を真っ赤にして私の着物に顔を埋めた。
あえてもう一度言わせてもらおう。私が犬なら
「とっても…素敵です」
無防備にも上目使いに頬を赤らめてそう告げられた私は、どうしたら良いのだろうか。人間を止めていっそ犬になってしまおうか。
「ありがとう。これから…どうしようか。」
そう問うのが精いっぱいだった。