非公開兎物語
□泡沫の砂糖菓子
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あまり寝付けない夜の事だった。
エドワードも寝たと思っていたから、僕もベッドの上で無理矢理目を閉じた。
息がかかる。枕元に誰かいる。否、誰かは分かっていたのだが。
「イワン」
返事はしなかった。
目も、開かなかった。
だって、呼びかけというよりは、呟きの様だったから。
それはもう、とても切なげな。
じっとしていたら、枕元の存在は離れて行くどころか、近づいてきた。
ちゅ
どこかで、短いリップ音が響いた。
僕の唇だ。
それでも僕は起きようとしなかった。
それは今になって睡魔が襲って来たからか。
今起きてはいけない、と自分の中の何かが指示を出したからか。
誰にも分からなかった。
その日の後も、エドワードの態度は変わらなかった。
意識しているのは僕だけだった。
きっと知ってるのは自分だけだと思っているけど、本当に知ってるのは僕だけだった。
数日経った夜。エドワードが先に寝てしまった事を、妙に意識してしまう。
エドワードの枕元に屈んでみる。
「エド」
返事はない。
あの日触れた唇。
触れても許される位置にある。
ちゅ
「…ん゛!」
直ぐに離そうとした唇は繋がったまま、後頭部を抑えつけられた。
口は抉じ開けられて、舌が絡まる。
どうしよう、焦ったらいいのかな。
抵抗する気にならない。
甘い、甘い、気持ちいい。
猫みたいに、少しざらざらした舌。
「ん…」
舌と舌を繋ぐ銀色は、水飴のように甘い永遠を感じさせる。
「…起きてたの」
「お前も前、タヌキ寝入りしてたくせに」
ばれていたみたいだ。
ちょっと照れてるエドワードが新鮮で、笑ってしまった。
「何笑ってんだよ」
「エドが可愛いから…ふふ、っうゎ!」
ベッドに引きずり込まれて、布団の中でじゃれ合う。
最後は優しい小さなキスをして、お休みをした。
綿飴のようにふわふわ、温かい時間だった。