捧げ物
□有紗様へ
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多「あ、あれ?」
草「混浴!?聞い取らんぞ十束!」
多「いやだってホントに知らなかったし…。てゆうか八田が鼻血出して気絶してるよ?」
草「ほっとけほっとけ。そのうち寒うて起きるやろ」
多「まぁ秋だからねー。」
草「…と言いつつ何入っとるんじゃボケ。俺らは出るぞ」
多「えー。カナンちゃんと入りたいー。それに秋だし冷えたし疲れたし」
草「お前が連れてきたんやろが!!…ったく…。今日だけやからな」
多「やったぁ!…ってあれ?キングは?」
草「あいつは今身体を洗っとるからそのうち来るやろ」
多「ふぅん?じゃあお先に〜」
「……って言いながらナチュラルに入って来るのやめてくれませんかね?特に多々良は肩抱かないの」
多「やだー。俺カナンちゃんの事大好きだもん」
草「やけどカナンが嫌がっとるやろ?放しぃや」
「貴方もだよお兄ちゃん。何気に腰抱き寄せないで。…タオル巻いてる所に手があるだけ多々良よりマシだけどさ」
…そうして、何故か私の両端に座りスキンシップという名のお触りをしてくる2人の腕をつねり上げた。
何勝手な事してくれてんだよって意味で。
素早くタオル巻くのだって大変だったんだから。八田君には少し見られたかもしれないけど。
(…てか2人とも身体引き締まってるなー…)
毎日鍛えてるから?いやいや、鍛えてないか。鍛えてるとこ見た事ないし。
ならやっぱり男女の差かなぁ…?いいなぁ……。
多「どうしたの?そんなに見つめちゃってさ」
「えっ…!そ、それは…/////」
多「あ、もしかして触りたい?それならそうと言ってくれればよかったのに。さ、ホラ」
「わわっ…!」
多「どお?…って言っても僕はあんまり筋肉ない方だけど。八田の方が触りがいがあるけど何せ女の子への丹精がなぁ」
…そう言って片手で私の手を掴んで引き寄せ、もう片手でカナンの背中に手を回して引き寄せる多々良。
それに反抗して身を捩ってみるが、どうやらそんなのは抵抗のうちに入らないようで。
寧ろタオルが段々とはだけていくだけで彼の腕からは一向に抜け出せなかった……。
草「コラ!人の妹になにしとるんじゃ!!」
多「いてっ!」
「お、お兄ちゃん…」
草「こっちに来ぃやカナン。…十束。お前みたいに無計画なやつにはカナンは渡さへんで?」
多「えぇー。お兄ちゃん酷ーい!」
草「誰がお兄ちゃんや!!誰が!!気分悪っ」
今すぐそこに正座しろや!!
…と、そんな物凄い顔で命令する実の兄に癒しの風呂の中なのに正座をしろとはなんと鬼畜なと思ったが同時に仕方がないなとも思った。
だって…ねぇ?
…そんな何時もならウザく感じる兄の叱りグセも、今は感謝だ。
横目でガミガミネチネチと怒られる多々良にいい気味だと笑っていると、フイに新たな人影が……。
尊「……おい。」
「あ、尊さん。遅かったですね」
尊「何なんだこりゃあ…。いや、それよりも何でお前がここに…」
「まぁ色々とありまして…。兎に角湯槽に浸かって下さい。風邪ひいちゃいますから。ねっ?」
尊「……ならお前は俺の隣に来い。」
「へ…っ?」
尊「勘違いすんじゃねぇぞ。これはクソ兄貴の友人でも、王としての俺の言葉でもねぇ」
「じゃ、じゃあ……?」
尊「……一度しか言わねぇからな」
……そう言うと。
貴方は彼らがこちらを見ていない事をいい事に。
私を抱き寄せて優しく耳元で囁いたんだ。
これは……。
((これは))
((俺自身の願いだ、と))
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