捧げ物

□40万hit記念夢小説!!
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❁+❁+❁

















「じゃあね嵐くん。先生も、今まで色々教えていただいて本当にありがとうございました」



「いやいや、お礼を言うのはこっちの方だよ。僕も楽しかったし、何より嵐の面倒をよく見てくれて。……それより折角教えたんだから彼氏さんに美味しい料理作ってあげなよ?」



「ふふっ、それは分かってます。絶対に無駄にはしませんから!……っと。それじゃあ寂しいですけど寮の門限もありますし、そろそろ行きますね。嵐くん、ばいばい?」



「………………、」



「……?嵐くん…………?」



「…あー、ごめんねカナンちゃん。嵐ってばカナンちゃんの事ホントに大好きだったから多分お別れするのが辛いんだと思う。……嵐。」



「う………っ!やだ……、やだよぉ!!!お別れなんで絶対やだぁ…………!!!!!!」



「……、嵐くん…………。」















……………蒸し暑い夏。



既に日本は夜の21時を回っていても、昼間の暑さが尾を引き妙にムシムシとしているこの季節のこの時間帯に。



カナンは数日前からお世話になっていた先生、もとい彼女の料理の師匠である嵐くんの父親にお礼を述べていた。



本当はこんな時間だから学校まで車で送ってくれると親切に言ってくれたのだけれどそこまで迷惑をかけられないと断った結果、彼らはじゃあせめてとアパートの入り口まで送ってくれたのである。









………………そして、お別れの挨拶を述べたところで冒頭に至る。









嵐はいつに無くワンワンと泣きながらカナンに抱きつくと、そのまま涙ながらに今の気持ちを包み隠さず語ってくれた。



短い間だったけど楽しかった、と。



まるで本当のお母さんの様だった、と。



自分の作った料理はどれもこれも美味しかった、と………。










……彼の家庭は彼が生まれてすぐに両親が離婚した事から、彼自身母親というものを知らないで育ってきたのだ。



周りの子は皆いるのに、自分にはいない。いた記憶すらない。



お母さんって一体どんな存在なんだろう。温かいのかな?いい匂いがするのかな?怖いのかな?優しいのかな?



………………嵐にとってはそんな風に思い悩んでいた矢先の出来事だった。



だから短い期間だったとはいえいつの間にかカナンを母親代わりとして見ていた彼にとっては、余計に彼女と別れるのが辛くて苦しくて。



カナンはそんな事情を知り、察したからこそ泣きながら抱きつく嵐をからかう事無く抱きしめ返したのだった。



ありがとう。それからごめんね、という意味を込めて………………。















「……また遊びに来るから。その時もまた私と遊んでくれる?」



「うっ、ぐずっ………う、うん……………っ!!!!」



「そっかそっか。嵐くんは優しいね。それにまだ小さいのに好き嫌いもないみたいだし偉いよ。お手伝いもいっぱいしてくれたし、お姉さん尊敬しちゃうな〜」



「ぐすっ、くずっ………!ほ、ほん、とう………っ?」



「本当だよ本当!嵐くんはきっと将来いい旦那さんになるね。…だからもう、泣かないで?」



「分か、た……!なら…………っ」



「ん?」



「俺が、大きくっ、なったら、カナン、お姉ちゃんを、お嫁さんに、する……………………!!」



「………………!!……うん、ありがとう。大きくなっても嵐くんがまだ私の事を好きでいてくれるならお姉ちゃん楽しみにしてるね」



「うん………………っ!!!!」



「よかったね嵐。ホラ、じゃあお姉ちゃん帰れないからこっちにおいで。……それじゃあごめんねカナンちゃん」



「いえ!改めてお世話になりました。じゃあ今度こそ本当に失礼しますね」



「ばいばい、お姉ちゃん……!!!!また来てねー!!!!!!!」



「うん!ばいばい、嵐くん!!また遊ぼうね!!!!」
















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