私を受け入れて
□第6喰種
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「お嬢様!!!!」
「…………………っ!!いやぁぁぁぁあっ!!!!!!」
「落ち着いて、落ち着いて下さい。大丈夫ですよ」
「っ、いや、は、えっ、せ、セバス、チャ……………………っ?」
「えぇ、私です。落ち着いて深呼吸をしてから、こちらをお飲みください」
……………………最悪だった。
目が覚めても気分は動転していて、今はセバスチャンがカナンの背に腕を回してベッドから身体を支え起こしている。
そして彼からペットボトルを受け取り、それを飲むまでは兎に角気分が落ち着かなかった。
汗が身体に張り付いていて気持ち悪い…………………。
「どうされました?かなり魘されていらっしゃいましたが…………。」
「……………征十郎に、秘密を全部、打ち明けている自分がいて……………………っ」
「……………成る程。しかしそれは夢に過ぎません。ご安心下さい、ここには今私以外誰もおりませんよ」
「誰、も…………………?」
「えぇ。只今ランチの時間帯ですので、調度席を外されております。本日は黒磐様でいらっしゃいました」
「そ、う……………………。」
「カナン様も食堂へ行かれますか?眼帯さえすれば局内なら自由に動いてもいいとの御達しですし、是非気分転換にでも」
「……………………うん。行く」
………………徐々に、徐々に。
今はお昼時なんだ、とか。
魘されていたんだ、とか。
自分の状況を理解し始めたカナンはセバスチャンにペットボトルを渡すと立ち上がったのだった。
彼の言う通り、いつもデリバリーにしていた食事もたまには食べに行ってもいいかもしれない。
半喰種がいる事は知られていても、それが“私だと”知っている人はごく僅かだから眼帯さえすればバレないだろう……………………。
(……………夢で疲れるって、最悪だ)
「セバスチャン、着替えを。」
「畏まりました。…………そういえば、」
「…………………?どうかした?」
「お目覚めになるまで携帯にご連絡が沢山来ておられましたよ。」
「え、携帯に?誰からだ……ろ…………………、……………。」
「………赤司様からですか。未読12件、不在着信が6つ。」
「………………………………行こう、セバスチャン」
「おや。返信は宜しいので?」
「いいの。既読さえ付けなければ今読まなくてもいいでしょう?それよりお腹減ったし、行こ」
「…………左様でございますか。そうですね、ピークは過ぎたもののあと一時間で閉まってしまいますし急ぎましょうか」
………………簡単に着替えを終え、髪を整え始めた所で渡された携帯。
そのロック画面にはいくつもの赤司征十郎の名が並び、少しだが文頭の内容が表示されている。
そこには「会って話がしたい」や、「忙しいかい?」など嫌な予感しかしない文書が綴られていて。
カナンは携帯をセバスチャンに預けると返信する事も開く事も無く、そのまま部屋をあとにしたのだった……………………。
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