私を受け入れて

□第6喰種
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「お、やっと起きたのか寝坊娘」



「おはようカナンちゃん。よく眠ってたみたいだね」



「うむ。おはよう。」



「丸出さん、篠原さん、黒磐さん。おはようございます。皆さん今からお昼ですか?」

















………………午後1時半近い時間帯。



そんな時間に上等捜査官3人が集まって食事を取る風景は何とも妙なものだった。



しかし知り合いばかりでかえってこの方が気が楽かもしれない、とカナンは空いている丸出の隣の席に腰を下ろす。



何故なら今この空間には自分達と彼ら、そして明日の仕込みをしている食堂のおばちゃんしかいないのだから…………………。











(CCGの昼休みは12時から13時までだもんね。上等捜査官とか準特等捜査官とかは忙しいから例外みたいだけど……………。)
















「My lady. ランチは何を取られるのですか?」



「うーん、よく分からないからセバスチャンのお勧めで。和食系がいいな」



「畏まりました。ではお持ち致しますので暫くお待ちください」



「うん、宜しくね〜〜」



「…………………相変わらずだな、お前。その年で人の上に立つ事に慣れてやがる」



「………………………??」



「何でもねぇよ。………それより優秀な執事サンがもう持って来たぞ。仕事速ぇな。」



「お待たせ致しましたお嬢様。こちらは本日の日替わりランチ、和食の焼き魚定食でございます」



「ありがとう。美味しそうだね、いただきます!」



「君も…………、セバスチャンだったかい?こっちに座ったらどう?」



「いえ、お心遣いはとても嬉しいのですが私は“あくまで執事”ですのでお嬢様と同じテーブルに着くなど恐れ多い………。………………おや?」



「………………?セバスチャン?」



「…………………………………。」


















……………朝食を渡され、その中の一つのお味噌汁を口に運んだ時だった。



篠原さんの言葉を返した時に何かに反応を示したセバスチャン。



その表情は険しくはないものの、決して穏やかなものでもなく。



カナンは彼を呼んでみたが、結局いつもの胡散臭い笑顔で「何でもありません」と答えてしまわれてはそれ以上追求は出来ない。



やったとしても無駄だと長年の付き合いで知っているからだ…………………。


















「カナン、その漬物寄越せ」



「嫌です。どうしてもって言うなら代わりにデザート下さい」



「いいぜ、ホラよ」



「えっ…………………!?」



「…………何だその声は。」



「い、いや………まさか丸出さんか素直に交換条件を呑んで下さるとは…………………。」



「……………………お前にとって俺って何なんだ」



「えぇ?外道…………………、………じゃなくて!偉い人!」



「外道っつったか?外道っつったよな?ぁあ?」



「そ、それより漬物ですね!はいどうぞ!」



「………………………ふん。」


















……………いけない、いけない。



つい本音が漏れてしまった、とカナンは態とらしく笑うと彼のデザートと自分の漬物を入れ替えたのだった。



丸出さん、カツ丼食べてるから口が油っぽくなってるんだろうね。口直しってところかな………………。











(うーん、これ甘くて美味しい!)



















「つかさっきから煩いぞ。」



「へっ?」



「携帯のバイブ音だ。誰のだ?」



「ん?それ俺のじゃないですよ。俺の携帯はいつもバイブ切ってますし」



「うむ。私も同様。」



「…………………って事はお前かよ、カナン」



「私の……………?………………、…………“どういう事”?セバスチャン」



「…………嗚呼、これは大変失礼致しました。私とした事が少々“失念”していたようです」



「…………………………“失念”?」



「ふふ……………。それよりお嬢様、此方を。全て赤司様からのもののようです」



「…………………、…………今はいい。だからバイブ切っておいて。出て来る前にも言ったじゃない」



「………………畏まりました。」



「いいの?赤司って、確かカナンちゃんの許嫁の事だよね?」



「いいんです篠原さん。会って欲しいと言われても、これじゃ会うに会えませんし」



「……………彼に言って無かったのかい。」



「はい。一生隠していくつもりです」



「ふむ……………。しかし彼と一度会った事があるが、とても賢そうな人間だった。彼になら言っても問題は無いと思うけど」



「……………………………え?」



















……………セバスチャンの“失念”からきたこの会話に。



カナンは弱冠居心地の悪い思いをしながら全てを平らげ、お茶を手にしたのだった………………。












…………………以前、家の手伝いという名の検査の為にCCGに来ていた時。



その迎えに一度彼がセバスチャンに付いて来た事がある。



入り口に真っ黒な燕尾服を着た執事と、その横に真っ赤な整った顔の彼が揃って居た時は目がチカチカとしたものだ。



そして恐らくその時だろう。自分の知らない間に彼と篠原さんが接触したのは。



だって、その他に彼と篠原さんが接触する機会が思いつかないから………………………。



















「……………………いつの間に。」



「カナンちゃんから見せてもらった写真で、顔や名前は知っていたからね。それに会った時は執事くんの隣に立っていたからもしかしてと思って話しかけたんだ」



「…………何で言わなかったの?セバスチャン」



「聞かれませんでしたので。」



「………………捻くれ者め」



「まぁまぁ。………にしても本当に賢そうだったよ。とても什造より年下だと思えないな」



「なんだ、そんなにいい男なのか?」



「えぇ。丸出さんも一度会って見たら分かりますよ。写真と本物では大違いです」



「ほぉ…………………?」



「も、もういいでしょう。その話」



「いやぁ、よくねぇよ。」



「何故です?私としては放っておいて欲しいんですけど」



「そりゃお前、ここでは見た事のない赤い髪に整った顔の兄ちゃんがこっち向かって歩いて来てるからな」



「はいはい、そうですか………………………、って、え?い、今何て?」



「だから………「僕が来た、と」












「…………………………!!!!」



「この方はそう仰られたんだよ、カナン。」
































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