想いの結晶

□第4想
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✐ ✐ ✐

















「服?………………すまない、失念していた。上の代わりは俺の服があるが………その………………、」



「あー、うん。言わなくていいよ。だから洗濯機に高速で洗ったらすぐ乾くよう魔法かけてくれない?」



「わ、分かった。明日どうにかするとして今夜はそうだな、これで我慢してくれ」


















………………と、いう事で。



お風呂上がりに洗い終わった下着を身につけ、渡された大きな黒のTシャツを被るとそれこそワンピースで。



ズボンも試しに履いてみたのだが、まずウエストが合わないし裾も引きずってしまうくらい長かった為諦めて悩んだ末に履かずに彼に返す事に。



するとその姿で浴室から彼のいる寝室に向かったらため息を吐かれてしまった。



何故だ。
















「……………まぁいい。俺も風呂に入ってくる。上がったらリビングにいるから何かあったら声をかけろ」



「リビングに?」



「この家に寝室は一つしかない。俺はソファーで寝るからお前はそこを使え」



「え?じゃあ一緒に寝ればいいんじゃないの?」



「は……………………っ!!!?」



「ソファーで寝たら身体が痛くなるし、このベット凄く大きいし。グラシエが嫌じゃなかったらそれでいいと思うんだけど」



「………………お前は天然なのか、策士なのか。どちらにしても恐ろしいものだな」



「………………………?」



「ならばお言葉に甘えさせていただこう。だが言っておくが、手を出さない保証はしていない。それが嫌なら先に寝ていていろ」



「でも嫌がる事はしないんでしょ?それに今日は沢山寝たから大丈夫。行ってらっしゃい」



「……………全くの無知というわけではないのか。それもそれで考えものだな」















………………策士か天然か。



カナン自身は気付いていないが、割合としては《天然4》《癖3》《女としての自覚なし3》とこざっぱりしているだけで決して狙っているわけではない。



ただし相手に対して割合が変わるので一概にこうだとは言えないが。












(………………グラシエは何で私なんかが好きなんだろ)











……………確かに彼の言う通り、まったくの無知という程もう可憐ではない。



嫉妬を煽り、ノアールを手に入れるには一番色事を応用させて手に入れるのが効率的だったから覚えたまでだ。



その大まかな方法としては彼氏を一度に何人も作り、わざと鉢合わせをさせる。そこで嫉妬させてピックアップするのだ。



勿論そこに恋愛感情は皆無である。なので閨での情事は当然した事はないし、唇は愚か頬にキスまでしか許した事が無い。それだって強請られたから渋々だったし。



第一私は魔女だ。いざとなれば人間の男くらいどうにでもなる。今回ばかりは例外だが。
















「……………………つまんないの」
















……………携帯は取り上げられており、テレビもつまらない番組ばかりで退屈だ。



おまけにこの家は全体的に物が少なく、必要なものは揃っているがそれ以上の娯楽はない。



但し本だけは多くありそのどれもが魔法の指南書で、背表紙を見た限りでは昔読んだ事があるものばかりだったがこの際仕方が無いだろう。



そうして適当に目についた本棚にある本を一冊手に取り開くと、ちょうど挿絵の部分が開かれたのだった。



右上に小さく書かれている章の題名は《オグルとの恋》。












(…………………………恋、か)













……………その分厚い本にはこう書かれていた。



人間はハートをいくつも持っているが、魔法使いは1つしか持てず命そのものである。



もし恋をしたら相手が人間やオグルであってもハートを差し出さなければならないが、その場合差し出した魔法使いは裁判にかけられカエル、ヘビ、ネズミ等の動物に変えられ1000年間闇をさまよわなければならない決まりがある。と。



彼はこの罰を知っている。知っていて尚真っ直ぐな瞳で恐れないと言ってのけたのだ。


















「……………私のハートはノアールだから渡せない。渡しても相手はオグルじゃないから死んでしまうし……………………って、痛っ」


















ドクン。ドクン。












ドクン…………………………!!


























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