餃子パーティー
□餃子パーティー
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刻んだ野菜を全てボウルに入れると、昴が海司を振り向く。
「海司、待たせたな。肉、ボウルに全部空けていいぞ」
「また人を肉バカみたいに…」
ぶつぶつ言いながらも、海司は挽き肉のラップを解き、ボウルに次々と挽き肉を入れていく。
そこへ昴は何のためらいもなく塩胡椒をかけ、鮮やかにしっかりと混ぜていく。
「そら、餃子の皮開けろ」
「はいは〜い♪オレ、こう見えて餃子包むの得意なんだよな〜」
ウキウキしながら餃子の皮を出していくそらの横で、瑞貴は水を注いだ小さい器を置いていく。
その時、控え室のドアがノックされ、静かに開けられる。
「遅くなりました」
そう言いながら入ってきたのは、石神、後藤、黒澤の公安の3人だ。
「嬉しいなぁ♪このメンバーで餃子パーティーって。オレ、昼間っからずっとワクワクしてたんですよ」
黒澤は餃子のあんを混ぜる昴にシャッターを切りながら、非常に楽しそうだ。
「黒澤、その写真、撮ってどうするんだ?」
怪訝そうに黒澤を見下ろす後藤。
「もちろん、今日の記念にアルバムに綴じるんです♪…あ、婦警さんたちにも喜ばれるかも…」
「ざけんなよ」
あんをこねながら、昴が黒澤を睨む。
「こわっ!めちゃこわっ!」
思わずカメラを背後に隠す。
「じゃ、包むか。お前らも働けよ」
「お前に言われなくてもやるよ」
後藤の言葉と共に、みんなが袖を捲る。
「欲張ってあんを詰めすぎるなよ。きちんと閉じないと肉汁が溢れるからな………聞いてんのか!?海司!」
「すんませんっ!」
海司が慌ててあんを皮からボウルに戻す。
「へへっ♪やっぱりオレ上手いよな」
そらが器用にひだを作りながら餃子を閉じていく。
「僕だって負けませんよ!」
黒澤がそらの横で闘争心を隠さない。
「…瑞貴、それは…?」
「可愛いでしょう?今は白鳥の形に作ってます」
どこをどう包んだら餃子を白鳥に作れるのか、桂木は瑞貴の手元から目が離せない。
昴は誰の期待も裏切らず、美しいひだを作りながら餃子を包んでいく。
「石神…後藤…」
「今、私に話しかけるな」
「黙って作業させろ」
昴の残念な視線の先には、石神の手の中で無惨に次々と破れていく餃子の皮と、後藤の手元からボロボロとこぼれていく、昴が丹念に混ぜた餃子のあん…。
「お前ら…そっちで座ってていいぞ…」
「何を言う。ようやく調子がついてきたところだ」
そう言う石神の繊細な指先が、再び餃子の皮を貫く。
「そう言って、お前は後で『お前ら、何にもしないで食うばっかりだな』とか嫌味タラタラなんだろ?」
そう言う後藤の手元から、包みきれなかったあんが机に直にこぼれ落ちる。
「………」
言葉もなく見つめる昴の目の前で、事態は一向に改善されない。
「この餃子の皮、不良品じゃないのか?何故こんなに穴が空く?」
「小さいんじゃないですかね?中身がちっとも入りきらないんですけど」