餃子パーティー
□餃子パーティー
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ここは
総理官邸内のSP控え室。
総理の今日の予定は全て安全に終わり、総理はすでに公邸に帰っている。
控え室に明かりはなく、今は誰もいない。
そこへ、複数の足音と話し声が近づく。
「………か?」
「…ぶん……」
「このオレに間違いなんかあるわけねぇだろ!」
「昴さん!シーッ!」
「…ったく…めんどくせぇな」
SP控え室の扉が開けられ、明かりがつけられる。
「そら、カセットコンロとフライパン出せ」
「はいは〜い♪」
「瑞貴、野菜洗ってこい」
「はい。あ、昴さん」
「何だ?」
「細かい野菜くずは、ノインにもらっていっていいですよね?」
「………好きにしろ」
「良かった、ノインにお土産ができた」
そう独り呟きながら、瑞貴は野菜を持って給湯室に向かう。
「昴さん、挽き肉、ボウルに空けますよ?」
「バカ!先に肉だけ出してどうする?海司、少し肉から離れろ」
「人を肉バカみたいに…」
昴から顔を背けながら呟く海司の独り言は、テーブルの上に買ってきた材料を並べる昴には届かない。
桂木は、ビールや日本酒を冷蔵庫にせっせとしまう。
と、桂木の携帯が鳴る。
「石神たちからだな…もしもし」
電話に出る桂木をちらっと見ると、昴は瑞貴が洗ってきた野菜の中から白菜を取り、海司に投げる。
「うわっ!」
「刻め」
「昴さん!それ言ってから投げて下さいよ!」
「そら、にんにくをみじん切りだ」
「はいは〜い♪」
「チビ同士、仲良くやれよ」
「…チビ同士………このキャリア、一言多いんだよなぁ」
微かに手をワナワナと震わせながらもにんにくを刻むそら。
「僕はにらを刻みますね」
昴の返事を待たず、瑞貴は包丁を握る。
「石神たちは警察庁を今出るそうだ。昴、俺は何をすればいいんだ?」
「桂木さんは、米研いで下さい」
「よし。この電気釜は凄いぞ!釜が二層構造で遠赤外線が米を…」
「あ〜あ、始まっちゃった」
にんにくをみじん切りしながら、そらが諦め口調で呟く。
「まともに聞いちゃダメっすよ…」
海司が大胆に白菜に包丁を入れる。
「お前ら!聞いてるのか!?」
「聞くともなしに聞いてます」
鼻歌を歌いながら野菜くずをビニール袋に大切そうに詰める瑞貴が、軽やかに返す。
昴は無言のまま、しらたきを細かく刻む。
その手つきの軽やかで鮮やかなこと。
思わずみんなが昴の手元を見つめる。