01/01の日記
10:06
大晦日限定拍手夢ver2
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今日は大晦日。
家の中は慌しい雰囲気に包まれていた。
別に忙しいのは僕じゃない。
妻だ。
日本文化を学んだ彼女は大晦日とは何たるかを理解しているらしい。
先程から掃除やら料理やらで一生懸命に動いていた。
僕はといえばコタツの中で本を読んでいるのだが。
そしてもう一人、忙しいそうにしているのがいる。
息子だ。
どうしても母親の役に立ちたいらしい彼は窓拭きという役を買って出た。
それでさっきからこちらも一生懸命に窓を拭いている。
2011年最後の日の風は冷たく廊下は冷えるだろうに、よくもまあ濡れた雑巾を手で持てる、と変なとこに感心していた。
ぼくがまどをふいているのを、たまにおちゃのまからおとうさんがしょうじをあけてみている。
おかあさんはさっきからおせちりょうりを作っているのに、なんでおとうさんはなにもしないんだろう?
おとうさんのことはすきだけど、ちょっとはかていのこともかんがえればいいのに、と思った。
ようやく下のほうのまどをふきおわった。
おかあさんは下だけでいいよ、っていってたけど、どうせなら上のほうもふいてよろこんでもらいたい。
そうかんがえて、いつもつかっているふみだいをもってきた。
のぼってみるけどぜんぜんとどかない。
くやしくて、できるだけせのびしてみたけど、こんどはばらんすをくずしておちそうになった。
「危ないよ」
うしろでひくい声がして、おとうさんがぼくをささえてくれていた。
「ありがとう・・・」
「ん」
いつのまにおちゃのまからろうかに出てきたんだろう?
それなりにぼくのことみていてくれてるんだ。
そう思うとちょっとうれしかった。
「それ、貸しなよ」
「え?これ?」
ゆびさされたさきにあったのは、ぼくがまどふきにつかっていたぞうきん。
わたすと、おとうさんはぼくにはとどかない上のほうのまどをふきはじめた。
「えっ・・・やってくれるの・・・?」
「君じゃあ危なっかしくて見てられないからね」
でもそれじゃあぼくのしごとがなくなってしまう。
どうすればいいかにこまってしまった。
おちゃのまにもどって、さっきのおとうさんみたく、ひとがはたらいてるのをみていたくなんてない。
きっちんに行って、おかあさんになにしたらいいかきいてこようかな。
「君、暇なら廊下の雑巾がけでもしてなよ」
「! う、うん」
ぼくのかんがえてることがわかったのかな?
せなかがわにいるぼくなんてみえないはずなのに、おとうさんはそう声をかけてきた。
あ、あたらしいぞうきんもらってこなきゃ・・・
その日のよるは、みんなでこたつにはいってこうはく歌がっせんをみながら、おそばをたべた。
「おかあさんのおかげで、いえのなかきれいになったね」
『ふふ。窓を拭いてくれてとても助かったわ。
ありがとう』
「僕だって拭いたんだけど」
『恭弥もありがとう』
おとうさん、こどもみたいだ
って思った。
げんかんにはおかあさんがいけたおはながかざってあって、かみだなにはおもちがおそなえしてあった。
らいねんもいいとしになるといいな。
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10:04
大晦日限定拍手夢ver1
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23時を回ったころだろうか、
そろそろ寝ようと思ったところで玄関のチャイムが鳴った。
こんな夜中にいったい誰だ。
ここを僕の家と知ってのことなら咬み殺してもいいってことだよね?
イライラしながら玄関に向かう。
戸を開けると、来訪者が満面の笑みで挨拶した。
『こんばんは、恭弥先輩。夜分にごめんなさい』
「・・・何の用?」
彼女はコートを着込み、マフラーを巻いて寒さ対策は万全のようだ。
・・・いや、それはいいとして、なぜ大晦日の夜中に僕の家に来たのだ。
『除夜の鐘を突きにいきませんか?』
「は?」
『ツナ達に聞いたんです。
ジャッポーネでは大晦日に108つお寺で鐘を突くんでしょう?』
「まぁそうだけど・・・」
『だから、恭弥先輩と一緒に行きたくて』
誘いに来たっていうことか。
群れることになりそうだけど、でも
折角僕のところに来た彼女を追い返すなんてしたくないし、彼女と一緒に年を越せるのは嬉しい気がした。
案の定、寺は人で混みあっていた。
でも明かりが少ない事もあり、僕に気づく奴はいない。
除夜の鐘を突く列に並ぶと彼女ははしゃいでいるようだった。
『なんか、わくわくしますっ』
「ふーん・・・」
『あのね、先輩』
「なに」
『ひとりで年を越すの嫌だったんです』
「・・・」
『イタリアに帰ろうかとも思ったけど、それよりも恭弥先輩と過ごしたくて』
隣にいる僕の方を見ずにちょっと俯いて話す彼女。
思わず手袋はしていないその手を握った。
口に出しては言わないけど、僕もだよ、ってことを伝えたくて。
驚いたように僕を見上げた彼女は再び前を向くと、きゅっと小さく僕の手を握り返した。
列は段々短くなり、やっと僕らの番となる。
彼女は嬉々とした表情で紐を握ると、鐘を突き、満足そうな顔で僕のそばに戻ってきた。
『先輩は突かないんですか?』
「僕はいいよ」
そういって元来た道を歩き出す。
人ごみから離れると人工の明かりはなくなり、月明かりだけが辺りを照らしていた。
その月明かりを浴びる彼女の肌が白く透き通って見えて、きれいだった。
『恭弥先輩・・・』
「なに?」
『あの・・・もう一度手を繋いでもいいですか?』
「いいよ」
今度は自分の方から手を繋いできた。
その温もりに安心する。
『先輩・・・』
「今度はなに?」
『あの・・・今年は傍にいさせてくれてありがとうございました』
違うよ。傍にいさせたんじゃない。
"いてほしかった"んだ。
『・・・大好きです』
珍しく呟いたその言葉に、彼女を見ると俯いていてその顔は見えない。
足を止めて、繋いでいない左手で彼女の顎を取る。
見開いた瞳は真っ直ぐに僕を見つめ、互いの視線が絡み合う。
僕は迷わず、僕に愛を呟いたかわいい唇に自分のそれを重ねた。
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