短編
□否定してくれ
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「うぅ……気持ち悪、い……」
「なんや、奏多。ごっつ顔色悪いやん」
「今、跡部という中学生とすれ違ったのですが、入江さん除けの香水のニオイに酔ったらしいです」
「お、おぉ……そりゃ、とんだ災難だったな」
特にやることもなかったため、比較的仲の良い面子の居る102号室に遊びに来ていた種ヶ島。
鬼は在室だったが、残りの二人は種ヶ島が入室してから、しばらくしてから食事から戻ってきたのだ。
青い顔をしながら鬼が差し出した水を一気に飲み干す入江と、甲斐甲斐しくその背をさする徳川を交互に見やる。
「俺はてっきり、徳川が孕ませたんかと思ったわ」
「…………」
「……」
「いや、そこはすぐに否定してくれ……。頼むから」
二人の関係を知っているのは、ここに居る鬼と種ヶ島だけ。まだ大人な対応がとれる二人だから、知られていても深入りしてこないし、詮索もしない。
……墓穴を掘りました。